カンガルー・ヴァレーの家~大地の恩恵を受けるパッシブな住まい~

オーストラリアという広大な大地の中に存在するこの住宅は、シドニーから南へおよそ150キロ行ったところにある酪農が盛んな温帯気候地域にあります。敷地は標高およそ100メートル、赤道から南におよそ35度くらいのところ。夏季の日中温度は26度くらいになり、冬季は23度でけっこうあたたかいが南西からの冷たい風、ああ、そうか南半球だからか、その影響によって8月は最低気温は一桁くらいになったりもします。

そんな場所に住宅の設計を手がけたのは、オーストラリアを代表する建築家グレン・マーカット。彼は建築界のノーベル賞とも呼ばれるプリツカー賞を2002年に受賞し、世界的に高い評価を得ています。マーカットはおよそ40年以上にわたる設計活動で500以上もの建築をつくってきましたが、な、なんとその仕事のほとんどは、オーストラリア国内の住宅を中心とした小規模建築の設計です。しかも巨大事務所でなく、一人だけの事務所で建築を作ってきたっていうのもすごいですよね!かっこいい!!マーカットの建築は、丁寧で美しいディテールと、自然環境に導かれ、呼応した、豊かな生活空間を生みだす熟考がなされています。

そんな彼の住宅作品、冬季の間は日中に差し込んでくる太陽の光が奥深くまで入り込んで、その光による熱が内部の床や壁をあたためています。夜間は住宅は閉じられた状態になって、昼間に蓄積された熱が内部に再放射されます。必要に応じて熱交換器や堅木を燃料とするオープン式暖炉によって暖をとることができます。堅木は高温で燃焼し、排出炭素量をゼロとします。

反対に夏季の間は、通路部分と建物の向きや庇の張り出しを調節することによって、日光を内部に入り込むのを防いでいます。ガレージは夕方の夏の日差しを吸収するためか西側に配置されています。これらの計画的配慮によって、太陽光の入射は、朝から夕方まで排除され、レンガ積みの壁面や石タイルを張ったコンクリート面からなる床は冷えたままとなり、そこに保たれた冷気が昼間に放出されるようになっています。

春や秋の中間期は、庇によって床上に設定された高窓まで影をつくり、日差しはその窓から下だけとなり太陽光の入射を調節できるようになっています。暑さがある場合には、外側に設置されたブラインドによって、調節がなされます。これらのように、この住宅は空調設備を一切使わないで機能しています。屋根はもちろん十分に断熱が施され、波板のトタン板は雨水の収集装置にもなっています。ちなみに敷地は給排水の供給管轄外にある場所であるため、屋根の雨水が飲料水や生活供給水としてい多いに活躍しています。う~ん、パッシブ!

住宅の東端にある池は日中を通して太陽光の通り道に接しているため、そこに生じる水の美しい波紋が住宅内部の天井に映し出されます。またこの池は溶岩円頂丘の軸線上に位置しているため、その姿が池に映し出されます。いいですねえ。いい場所を建築が生活スタイルと空間で表現されていますね。風や光、水などの利用を考え、環境に配慮した建築。まさにそこには、自然と建築の調和のかたちが表現されています。このサスティナビリティの考え方は、原初的なようでこれからの建築を考えている現代建築のひとつのかたちですね!!

建築:カンガルー・ヴァレーの家

設計:グレン・マーカット

建築作品を見た雑誌:a+u 200811月号

建築のある場所:オーストラリア

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