積層の家~PC版によって構築された都市の棲家~

この住宅が建っている敷地は神戸にある市街地の狭小地。その建築面積およそ8坪、延床面積およそ24坪という、とても小さな建築は、設計者の自邸であり、そして日本建築学会賞受賞作品です。敷地三方にある建物が境界ギリギリまで建っていた状況のなかで、設計者はそこに家族が住まうための最大限の容積を確保しながらも、そのなかに平穏でありながら、家族、そして自分の居場所をつくりだすことをテーマに、長いことスケッチを描いていたそうです。

そこで設計者が生み出したアイデアは、板状のプレキャストプレストレストコンクリート(以下PC)版を校倉造りのように積み重ねて建築を構築するというかなり独創的なもの。最大で3.6メートルの長さをもち、50×180ミリメートルという断面形状のPC版およそ1800ピースにより構成される住宅は、狭い間口の敷地において、最大限の居住空間、そして空間における視覚的な広がりをつくりだしています。木造であろうが、コンクリート造であろうが、一般的に建築を建てようとすると、どうしても隣地との間に足場を設けたりなどすることで、隣地との隙間がある程度は必要にはなってきます。しかし、設計者がここで提案し、そして採用したこのPC版は、工場で製作し、現場で積み重ねて施工するので、人が持てる大きさに加工することで狭い道にも対応でき、結果、隣地との隙間を最小限まで縮めることができたそうです。とはいってもこのPC版を1800回も繰り返し積み重ねる作業はたいへんなものであったでしょうね~。

そんな間口およそ3メートル、奥行きおよそ9メートルの小さな敷地いっぱいに建てられた狭小住宅。PCという強く朽ちない材料を選び、そこに無垢の木材を同じ厚みで丁寧に配置させることで、極めて端正な家がつくりあげられています。その板状のPC版を校倉状に積み上げて出来たその隙間からは、内部へ柔らかい光が差し込むとても心地よさそうな空間になっていますね。トップライトから降り注がれる光もその隙間に呼応していますね。PCのカチッとした感じと、無垢の木の持つやわらかな線がまたいいですねえ。平面的には、階段が面積をとってしまっていますが、1階から3階までが連続する一つの空間となっていることで、単なる動線だけではない生活空間の一部となっています。そして積み重ねたPC版の隙間を利用し、そこに木材を挟み込んで家具や階段などがつくられているのがこれまた素敵だわ!それらの構造を利用したアイデアには感動を覚えますね!!たとえばその隙間に差し込んだだけのシンプルな棚なんかは空間を最高に魅力的にしていますよね!!!

そんなほとんど常識ではあり得ない構造や工法で生まれているこの住宅。そのギリギリなまでのストイックな設計は、空間を豊かにしているんですよね!でもそれが建築デザインとして住み手に押し付けている感じはしないんですよね。そんな空気感があります。都市で豊かな環境を得るためのすばらしい知恵に考えされられましたね!!

建築:積層の家

設計:大谷弘明

建築作品を見た雑誌:新建築住宅特集20045月号

建築のある場所:神戸市

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