長沢浄水場~マッシュルームコラムによる幻想空間!~

小田急線生田駅から住宅地のほうを抜け、小高い丘の先に浄水場があります。この建物は神奈川県川崎市にありますが、東京都水道局の施設です。ちなみにここには東京都と川崎市の2つの浄水場が隣接しています。ご紹介するのは東京都のほうの浄水場。相模川水系の川崎市管理の川崎水道経由で受水して、東京都水道局の上水仕様で処理しています。 海抜およそ80メートルのところにあるこの浄水場から自然流下式で多摩川を渡り、世田谷区、目黒区、大田区等の東京都民が使用する上水を供給しています。

そんなこの施設本館の建築。近代モダニズム建築の旗手、山田守によって手がけられています。彼の作品としては、戦前の逓信省関係の電話局や病院建築、重要文化財の隅田川の永代橋やお茶の水駅に架かる聖橋、東京オリンピック直前に完成した日本武道館や京都タワーも有名ですね。

連続するアーチの一部がガラスのカーテンウォールで覆れています。なんとも異形のファサードですよね。建築としての評価も高く、DOCOMOMO JAPANの建築にも選ばれています。でも、まあ、モダニズムっていうより、柱の上部がラッパ状に広がる造形は1920年代にドイツで流行った ドイツ表現主義のそれに影響していますかね。彼はドイツ表現派的な曲線を好んでいたのでしょう。そんな造形が日本の建築界に異彩を放っています。

内部空間は特徴的な巨大なキノコのような形の円柱が列をなし、配置され、直線や曲線の手すりを組み合わせた光景が110メートルにもわたって連なる直線通路があります。この長くガラス張りになっている廊下は「ろ過池操作廊」と呼ばれ、両脇にある濾過池を監視するためのスペースとなっています。昔は職員が直接監視して業務を遂行していたそうです。今はもちろんコンピューターによって制御されています。キノコの柱は急速濾過塔と呼ばれるもので、「マッシュルームコラム」という建築様式らしいです。なんか水が湧き出るようなイメージを彷彿させますねえ。「水の宮殿」とも呼ばれているそうです。優美で、曲面を用いた伸びやかな白いキノコの列柱はエントランや階段などにも配置されています。

その独特の雰囲気がどこか浮世離れしているせいもあり、ウルトラマンや仮面ライダー、戦隊シリーズものの特撮作品のロケ地やファッション誌のグラビア撮影などに多く用いられたそうです。私はちなみに後者にてその存在を知りました。一般誌でその存在を知るなんて不勉強でございます。反省します!

ちなみに東日本大震災以降、廊下のマッシュルームコラムは耐震補強により、ところどころ耐震補強の構造壁が併設されたそうです。ちょっと雰囲気かわったんだろうなあ。もとの美しさを保ちながらも、今の時代に求められている質を維持する。文化をかたちに残すということの大切さをこういう話を聞くと常々考えさせられるよなあ。

建築:長沢浄水場

設計:山田守

建築作品を見た雑誌等:建築家山田守作品集(著:建築家山田守展実行委員会編、東海大学出版会 )

昭和モダン建築巡礼東日本編(著:磯達雄、日経BP社 )

建築のある場所:神奈川県川崎市

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