酒田市立美術館~広大な敷地に飛び出す建築の壁!~

酒田市郊外に鳥海山や最上川、そして市街地を一望できる小高い丘の上につくられたこの美術館は、敷地面積およそ3万平方メートルの広大な敷地の中に、鉄筋コンクリート造平屋建ての建物がゆったりと建っています。コの字型に配置されたプランは、広い敷地全体を美術館としながらも、そこから望める景観や陽の光、時間など、すべてが一体となるように計画されています。いやあ、しかしすばらしいロケーションです!

この美術館の常設展示の柱となるのは、文化勲章受章者である洋画家森田茂氏の作品を中心に、日本芸術院会員の洋画家國領經郎氏の作品、酒田市出身の洋画家斎藤長三氏の作品と、彫刻家高橋剛氏の作品など、それに加え、企画展示室や市民ギャラリーなどが配置されています。

アプローチがまたいいんですよねえ。スギ型枠でできたコンクリート壁が、広大な自然の中に挿入され、壁面が沿うようにして空間が生まれていて、建築をボリュームとして扱わず、面によって構築し、建築の内外部を仕切りながら敷地へと開かれます。そんな全体を大きく囲い込みながら寄り添っている壁は、広い庭を見渡しながら展示空間を誘導します。それらは身体的なスケールをもちながら、訪れる人たちを包み込み、周辺の風景を内部に映し出しています。この配置は遠くに見える鳥海山をいかに素晴らしく魅せるか、それによって決まっていますよね!

内部空間は沈み込んで、行き止まりまで人を導くという動線となっています。美術館の空間が回遊性をもたせない空間になっているのは驚きですよね。企画展示室から常設展示室へ向かう長いガラスの廊下には壁が適材適所に配置され、折れ曲がったりしています。その壁面の織り成す光と影のリズム感が心地よいですね。森田作品の展示室は最も奥に配置しています。彫刻展示室の天井面には天窓を採用され、鉄骨の正方グリッドトラスが内部外部に現れ、静謐な空間のなかに、それが空間に活気を与えています。各展示室には、中庭に突き出すガラスボックスが配され、空間の連続性に緩やかさをつくっていますね。

中庭の中心に配し、庭に開けたカフェは、外部レベルよりやや低く設定され、窓際に座ると、目の前に芝生が広がり、その先には安田侃氏彫刻作品と鳥海山の雄大な景色をが望めることができ、作品鑑賞後の余韻に浸ることができます。

ディテールもまたすばらしいのですよ。抑制された材料が醸し出すストイックさが繊細に空間をつくりあげています。なにげない一つ一つが、建築を美しく演出し、機能的処理だけにとどまらず、徹底的にしてデザインされています。その場に訪れた人がどう動いて、何を感じるかということを建築家が考え抜いた形跡ですよね。それが訪れた人たちを包み込んで、彼らに響いている。そんな感じがします。

酒田はいいなあ。土門記念館もあるし、いつまでもこの場所にある建築を誇りに思い、大切にし続けてほしいですね。

建築:酒田市立美術館

設計:池原義郎・建築設計事務所

建築作品を見た雑誌等:新建築199712月号

建築のある場所:山形県酒田市

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