海のギャラリー~貝の中は海の中!~

1967年に開館した別名「土佐清水市立竜串貝類展示館」。この建物は、女性建築家のパイオニアである林雅子によって設計が手がけられた作品です。日本の戦後復興と足並みをそろえるように建築家として歩んできた彼女の作品は、コンクリートの可能性を追求した小規模な住宅がメインで、実際に実作品を体験できるものはなかなかありません。そんな中でこの建築は、氏の代表作であり、一般に公開されている数少ない現存建築です!2003年にはDCOMOMO.JAPANより、後世に残したい文化遺産として「日本におけるモダンムーブメントの建築100選」の1つに認定されています。

建物は高知坂本龍馬空港よりおよそ4時間のところにある足摺・宇和国立公園の一角、龍串に位置します。なかなか交通の便がよくないですねえ。そんな竜串海岸は、長い年月をかけて波風に侵食されて作り出された岩によるなんとも不思議な風景が有名です。場所的に台風もすごそうですねえ。

そんな場所に佇んでいるこの建築は、現在でも凛とした美しいシルエットを保っています。そのなかでまず目につくのは波打つような美しい屋根です。これは真っ白なオオシャコ貝をイメージしたそうです。三角形の板を山折り谷折りでつないだような、鉄筋コンクリート造の屋根が左右対称に向かい合っています。貝のように表面に凹凸があり、表と裏に別れていることから、この構造が選ばれたようです。2枚の屋根は頂部でつながっておらず、スリット状のトップライトになっています。これは地震時、屋根に負担がかからないために、左右に分ける事で真ん中のトップライトが揺れの緩衝材となっています。周りの緑色と青い空と真っ白な屋根の色合いが美しく、屋根の折半部分の陰影がくっきりと鮮やかです。南側は林が広がり、テラスと相対し、前の道は、竜串海岸の遊歩道の一部となっています。

妻側中央の扉から入ると、館内は、海の中ををイメージして造られ、トップライトから注がれる光が深いブルーに彩られた室内に降り注がれ、心地よい緊張感に包まれます。光が明るくて海の中にいるような心地良い空間です。空間は建物全体が折半構造で造られているため、柱や梁はなく、折り曲がっていることで地震時変形を吸収しています。

館内に展示しているものはその建物の名称のごとく貝。そのすべては土佐清水市在住の洋画家黒原和男氏が国内外で収集した貝殻のコレクションです。学術的にも貴重な貝を含む、色とりどりの貝達はおよそ3000種類5万点!すごい!!

明かりも展示物を照らす間接照明のみ。余計な照明器具は使用せず、トップライトからの太陽の光だけが1階フロアまで届くようになっています。また館内も外観同様に左右分かれていて、真ん中の吹抜けガラスと階段で左右を接合しています。トップライトからの光が印象的です。取り込まれた光が左右の壁に落ち、表面が粗く仕上げられた壁に光が落としこまれています。海中から水面を見上げた時の太陽の煌めきが表現されていて、床に置かれた透明な展示ケースが輝いています。薄暗い1階から2階の天窓を見上げると、貝の裏側が見えるようになっていて、まるで海の底から海面を見上げるような展示方法も面白いですね。上部からの自然光を下の階へと届けます。

1階床からキャンティレバーで支えられた階段もすばらしいですね!1階と2階を繋ぐ階段は直線に配置され、中心の梁から持ち出され、階段自体が床から独立して存在しています。素敵です!階段を上ると、2階の空間は左右から傾いた構造壁が三角形の空間を作り出し、折り曲げることで生まれた部分が展示空間として利用されているのがまたいい!

そんな素晴らしき海のギャラリー。一時期、この建物は老朽化によって存続危機に見まわれましたが、設計者の没後、夫で建築家でもある林昌二や地元建築家たちの運動によって改修工事にこぎ着け、この作品が蘇りました。良かった!いい建築は残していきたいですね!!

建築:海のギャラリー

設計:林雅子

建築作品を見た雑誌等:住宅建築20067月号、JA57、建築家林雅子(新建築社)

建築のある場所:高知県

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