聖十字架礼拝堂~幾何学と光による静謐なひろがり~

以前にこのブログでとりあげたトゥルクにあるブリュッグマンの復活礼拝堂。その建築と同じトゥルク共同墓地の敷地内にもう一つ礼拝堂が建っています。ナショナルロマンチズムの代表作である復活礼拝堂に対して、1967年に完成したこの建物は、水平ラインの美しいコンクリート打ち放しによる力強い、まさにモダニズム建築という感じになっています。設計を手掛けたのは建築家ペッカ・ピトゥカネン。

緑で囲まれたピンコロが敷き詰められたアプローチを進んでいくと、視界が開け、大きな芝生の広場が見えます。その左手に十字架が広い緑の芝生にシンボリックに立っています。グンナール・アスプルンドの森の墓地みたいですね。そして、その向こうに見えるのは、水平方向が強調されたコンクリート打ち放しの礼拝堂。その水平、垂直による幾何学がとても美しい形態です。

長くのびたコンクリートの庇が来訪者を迎えます。アプローチから続く低い天井高さが、心地よい緊張感を生み出しています。建物に沿って導くように設けられたこの庇は、建物本体とは独立して設けられています。庇の柱は中央に設けられ、荒々しいコンクリートの板が浮いているようにも見え、その隙間からは光が入っているのがわかります。そしてその片持ち庇による水平ラインが伸びた開口部の先からは、芝生の庭が見えます。そして低くおさえられたボリュームが緑の中に佇んでいます。エントランスにたどりつき、うしろを振り返ると、庇と芝生が見え、内外の連続性がコンクリートと緑による対比によって表現され、とても美しいです。庇が空間全体を低くみせることで、視線のひろがりを豊かにしています。

そして扉を開けて礼拝堂内部へと入ると、内部も外と同じ、コンクリート打ち放し仕上げとなっています。内部は暗く、光、そしてコンクリートの素材感を強く感じます。杉板型枠の壁が光に素材感を与えているのかもしれません。そのせいか壁面に反射する光が柔らかいです。入った右手は、ハイサイドライトからの間接光がもれる壁とベンチがあります。そして反対を向くと、大きな空間の中に視線が外へとダイレクトに繋がる大きな開口がもうけられています。建築本体の礼拝堂も空間の重心が低く設定され、空間的に庭と連続しています。

そして、その大きくひろがっているフラットな天井の中には、2つの四角いトップライトがもうけられています。一つのトップライトからの光は棺に当たり、もう一つのトップライトからの光は祭壇を照らします。2つのバランスの違う矩形のトップライトが祭壇と棺に光を落としコンクリートに豊かな表情が生まれています。床に開けられた穴からは、棺は地下から上げられるようになっているとのこと。祭壇はシンプルな四角い箱となっていて、参拝者側と、祭壇側を分ける厚い壁が空間を分節し、場を引き締めています。一切の装飾が排除されたこのコンクリートの幾何学からなる建築は、光の操作により、故人を送り出す、奥行とひろがりが感じる静謐な場となっています。

建築:聖十字架礼拝堂

設計:ペッカ・ピトゥカネン

建築作品を見た雑誌等:フィンランド光の旅(著:小泉隆、プチグラパブリッシング )

建築のある場所:フィンランド

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