静岡市立芹沢銈介美術館~石、木、水の素材が生み出した無垢な世界観~

教科書でもおなじみなあの登呂遺跡がある公園。その一隅に位置し、周囲の自然にとけ込むように構成された小さな美術館は、異色の建築家白井晟一の独特な個性が遺憾なく発揮された代表作であり、彼が最晩年に遺した作品の1つです。この建物は京都は高山寺石水院にから、「石水館」と命名されているそうです。

そんなこの美術館は、染色作家芹沢銈介により、故郷である静岡市に作品とコレクションが寄贈されたのを機に建設され、1981年の開館しました。現在収蔵されている芹沢の作品はおよそ800点、そして彼のコレクションは世界各国の工芸品およそ4500点という膨大な数です!なんか民藝館って感じですね!というわけで、美術館では様々な企画展示などが催され、彼の芸術を広く紹介しています。日本の美を鮮烈に浮かび上がらせた芹沢作品、その明るく緻密で自由闊達な色使いやその形のアイデアは、視覚的にこころに響く華やかさがあります。

美術館は遺跡から際立たぬように雑木林でとりまかれています。公園の入口からではその林に遮られていて、近付かないと見えてきません。近づいていくと、敷地の中心で噴き上げる水の響きその存在を教えてくれます。外部はゆるやかな銅板葺き屋根と、石を積み上げた外壁。塀と一体になっています。いやあ凄い!荒い石積みがプリミティブですわ!外壁全部が割肌野積みの御影石です。徹底的に使っていて圧巻です。この美術館は石の砦ですね。入口正面には美しい樹形の寒椿が待ち構えています。石壁に映えますねえ。その奥には中庭には水が張られていて、噴水があります。八角形の展示室の外観は要塞のようにも見えますねえ。

内部空間は、まるで遺跡を巡るような、うす暗くて重厚な空間。床に黒御影を本磨きで使った部屋では、鏡のように壁を映しこみ、浮かんでいるような気分になります。芹沢作品とどう関係しているのかはわかりませんが、そこには圧倒的な白井建築による世界観があります。中庭側は、黒く厚い日除けカーテンで自然光はが遮られ、天井や扉などの木部は照明に反射してつややかに輝いています。石のかたまりによるアーチ状の開口とチョウナの跡が残る楢材の組天井が、これらの雰囲気をよりいっそうたかめながら奥へ奥へと導き、ゆったりとした回遊空間を演出しています。特別室の坪庭にはしだれ梅があり、それを見ながら休憩するのがまたいいですねえ。室内から眺める坪庭は美術作品のようです。中庭に向いた開口の建具は銅製サッシュとなっていて、庭へでる開き戸は枠とすっきり重なった泣かす納まりです。

展示室の石天蓋には素朴、無垢、自然なものが人間にとって最もふさわしいものだというキケロの言葉が刻まれています。その言葉を哲学者でもあった白井晟一は石水館という建築作品で表現したかったのでしょうね。その重厚で濃密な空間は、どのジャンル、カテゴリーにもあてはまらない神秘性があり、不思議と包まれた安心感があります。

建築:静岡市立芹沢銈介美術館

設計:白井晟一建築研究所

建築作品を見た雑誌等:新建築198110月号、白井晟一(鹿島出版社)、白井晟一の建築Ⅱ(めるくまーる)

建築のある場所:静岡県

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