金沢市立玉川図書館~敷地の場所性と歴史性を更新する公共の場!~

金沢市の中心街にある大通りから少し入った、瓦葺き屋根の住宅が立ち並んだ城下町にこの図書館はあります。この建築は元専売公社の広い敷地のなかにある明治時代に建てられた赤レンガ造の専売公社(旧日本たばこ産業)の工場を、一部保存改修して郷土文化資料のための古文書館として別館(現・近世史料館)とし、それに新築の図書館が本館として併設しています。しかもこの建物は金沢生まれの建築家谷口吉郎とその息子吉生による唯一のコラボ作品で、吉郎が別館改築と本館建設の総合監修を担当し、吉生は新築本館の設計を担当しました。

隣地は玉川公園として整備され、とても良好な環境です。そのなかで建物は、近隣の住宅地のスケールと調和するように軒高を低くし、公園と図書館との関係性を丁寧に構築するようにつくられています。 別館外観は、屋根と外壁の修復を行い、歴史的な旧来の姿が保存されています。そんな別館に対して本館の外観は、コールテン鋼の金属板による軽やかでシャープな表現となっています。この建物が別館のレンガ造の彫りの深い重厚感ある表現に対比させ、歴史性の継承と対立を美しく浮かび上がらせ、上手く調和していますね。

中庭は隣接する公園と結ぶことにより 図書館と自然、そして街とのつながりをより深め、開かれた図書館としての公共性を高めることが意図されています。どちらの建物から見ても自然との連続性が感じられ、内部と外部を上手くつながった中間領域になっていますね。ベンチも置かれ、屋外読書のための場となっています。中庭には緑色の大きな鉄骨の梁が伸びていて、煉瓦の建物とコールテン鋼の建物を結んでいます。空を見上げた上部で梁がつながっているのが認識されることで、2つに見える建物が一体的に感じられますね。そして煉瓦の床が統一感をもたらしていますね。旧たばこ工場の外部と同様のレンガが床と壁に貼られ、隣接する史料館との統一感と調和がはかられています。

図書館へのメインエントランスは、コールテン鋼の四角いボリュームの下にステンレスの光る円柱が差し込まれ、その両側に天井をおさえた入口が設けられています。図書空間の真ん中には、事務所、集会室へとつながるブリッジがあり、中庭を貫通しています。先の棟の円形スペースが喫茶コーナーになっていて、中庭を見ながらお茶が楽しむことができます。本館部分は中庭を挟んで西側ブロックと東側ブロックにより構成されていて、それは、図書館の主要部分である開架閲覧スペースと、管理部門や研究部門だけを分離することにより、重苦しい図書館の雰囲気を取り去り、より日常的で身近な図書館空間をつくりあげ、落ち着いて読書にふけれるよう考えられています。構造は建物の西側がRC造であるのに対して、東側の開架スペースは鉄骨造となっています。およそ25メートルのスパンの鉄骨梁の間に円形状のガラスカーテンウォールが、開架スペースを資料館とをつなぐ中庭に向けた開放的な空間となっています。書架と机が並ぶ閲覧空間には柔らかな日が差し込み、そこからは中庭や玉川公園を見通すことができます。公園が建物内部まで入り込んでくるような感じがますね。天井はルーバーをとおして蛍光灯の光を拡散させ、全体としては明るいだけでないやわらかな光になっています。

敷地の要素を十分読み取りながら、丁寧に建築がつくられているのがわかりますね。この仕事から谷口吉生が建築家として一歩を踏み出した!この建築が日本、そして世界の谷口へと発展していく原点の建築なんですね!

建築:金沢市立玉川図書館

設計:谷口建築設計研究所・五井設計共同体

建築作品を見た雑誌:ja1996-1

建築がある場所:石川県金沢市

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