トリュフ~土から掘り起こされた建築、そして牛が!~

スペイン北部沿岸にあるラクセという町、その大西洋を見下ろす丘の上にとても不思議な洞窟のような家があります。これはスペインの建築家アントン・ガルシア・アブリルがつくった建築作品です。その名の通り、外見は収穫したての白トリュフに似ています。ごつごつした表面には土が付着し、この構造物が土の中で育ったように感じられますねえ。

さて、この建築、その制作過程がおもしろいんですよ!敷地にまず地面に穴をつくります。そしてその周囲の土をとり除いて抗を打ち、穴を囲む擁壁を立ち上げます。次に干し草の束を詰め込みます。それによって空気を穴の中心部に入れ、空間をつくっていくわけです。この干し草を何層か敷き詰めたら、その周りを土で覆います。

そして穴全体に コンクリートを流し込みます。ある程度コンクリートを流し込んだら、さらに計画した間取りに合わせ干し草を積み上げます。そしてその作業ごとに周りにある土の塀も高さを上げていきます。これらの工程を繰り返して建物をつくっていきます。

コンクリートが固まったら、周囲の土の部分をとり除きます。トリュフをとるみたいですね(笑)!そこに不定形なコンクリートのかたまりがあらわれます。土がコンクリートにいい感じの質感と色彩、形態を与えています。

そしてできあがった石を部分的に石材用切断機械で削りとってみると、その中からは詰め込んだ干し草の塊が現れます。ここで、パウリナという一頭の雌牛が登場します。その彼女の任務はでてきたこの干し草を食べて食べて食べ尽くすこと。彼女がそれを食べ終えるまでは、そこが彼女自身の棲家となります。斬新ですよね!そして面白すぎる!!しかもパウリナがこの食べる作業は1年もの時間を費やしています。そして彼女は干し草を食べ尽くすと、子牛から体重300kgほどの立派な雌牛となりました。効率の悪いこと(笑)!!

そしてコンクリートで出来た空間があらわれます。建築はまるで自然の洞窟のような、または、岩の塊のような空間で、そこには対比的に、内部にはモダンな要素が設けられています。石の家の内部は海をのぞむことのできる大きな窓。そのすぐそばにはベッドが配置されています。その他にもソファー、さらに簡単なシャワールームまで兼ね備えられています。シャワールームの上は吹き抜けがあり、外の光が注ぎ込んでいます。この空間に心地よさ、そして生活に必要な建築要素を内包するうえで、建築家はル・コルビュジェが設計したカップ・マルタンの休暇小屋をモチーフとしたそうです。なるほどねえ。

実はこのつくるプロセスを追った映像があります。とてもおもしろいです。笑えますよ~。

この建築は、周辺にコンクリート工場、牛、そして干し草しか無いという条件のもと、その土地で入手可能な素材と実現可能な工法のみでできた建築なんですよ。それがこの建築を自然の一部としてとらえられているんですねえ。まるでトリュフが土の中で育つようなゆったりとした時間の流れを牛と干草を用いることにより作り出しています。無定形の材質感にあふれた形状、そして荒々しい開口からみえる大西洋の水平線との対比がすばらしいです!

建築:トリュフ

設計:アントン・ガルシア・アゾリル

建築作品を見た雑誌:a+u 20109月号

建築のある場所:スペイン

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