聖イグナティウス礼拝堂~光に祝福される神聖な場所~

アメリカのシアトル大学キャンパス内にあるこの教会は、光の魔術師と呼ばれているアメリカ人建築家スティーブン・ホールの設計による作品です。この建物は、その敷地内の西側に新たな芝生のキャンパスの区画をつくり出すように設置され、その区画は将来的には、東側にも拡張されるようになっています。そのなかで、細長い矩形からなる教会はキャンパス計画のなかにおいて適した配置がなされ、また内部空間に集まるためのスペースを確保するのにも有効になっています。

教会のすぐ南側には池が配されていて、ここは「沈思のための場」となっています。建物は近づいてみると、屋根がいっぱいある不思議なかたちをしています。箱に7つの瓶をつっこんだような屋根形状をしていて、それがいろんな方向に向いてます。その瓶みたいなボリュームにはそれぞれにトップライトがもうけられていて、そのそれぞれから光がとりこまれるようになっています。そして差し込む光は、イエズス会の伝統的な礼拝儀式に基づくものとして、礼拝堂内部に光による表情を与えているようです。

さて、不思議なかたちをした親子扉を開けてエントランスに入ると、トップライトから柔らかい光が降り注ぎ、そこに色のついた柔らかい光が落ちて、洞窟のような静かな空間となっています。床には地図みたいなものが描かれていますね。天井からは照明がつられていて、形が少しずつ違っています。スロープの手すりや巾木が流れるようにつながっていますねえ。

メインの礼拝スペースに入ると、その空間は光のボリュームに満ち溢れています。多様な光からなるこの空間は、トップライトにもうけられているカラーレンズによって各々の光のヴォリュームが形成されながらも、色彩豊かな組み合わせによってその光と陰影が展開されています。各々の光のレンズのあるトップライトにはバッフル板が設けられ、その板に鮮やかな色が映し出され、教会内部には、それらの色彩の反射があらわれているわけですねえ。その様相はドクドクっという生命の鼓動にも感じます!ほんと心臓の中にいるような気分になります。光の色は黄色をはじめとして、祭壇の背後には青い光。おお!これまた不思議な開き方の扉の奥には赤い光の小部屋もあります。懺悔ルームとのこと。不規則で異なる光のヴォリュームは、光そのものがかたちを与えられた姿を現し、東西南北面が集結することでひとつの統一された儀式生み出しています。そして光のボリュームはそれぞれ、イエズス会カトリック教の礼拝次第の各部分に対応しています。深いです。

夜に特別なミサが行われる際には、それら光のボリュームが色鮮やかな光束となってあらゆる方向へと光を照らし出し、その光は教会を越えてキャンパスへと到達しています。また場合によっては、祈りをささげる人たちのために、夜どおし光の輝きを絶やさないでおくことも可能です。人がいる方向によって、その光の矩形は青、白、黄色などさまざまです。この色彩の融合は、もしかしたら人類の共存を願うものなのかもしれませんね。そこには光を絶妙に取り入れた静寂によって神聖な空間が生み出されています。光はやさしい輪郭を生み出しながらも、それがどこからもたらされたものなのかわかりにくい、でもそれがこの空間の神聖さを高めているような気がします。そんな鮮やかな光に祝福された空間は人々をやさしくつつみこみます。う~ん!さすがスティーブン・ホール!光の魔術師による神技です!!

建築:聖イグナティウス礼拝堂

設計:スティーブン・ホールアーキテクツ

建築作品を見た雑誌a+u 、ルミノシティ・ポロシティ(TOTO出版)

建築がある場所:アメリカ

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