潜水士のためのグラスハウス~コンクリートブロックとガラスが織り成す島のランドスケープ~

穏やかな海がパノラマで広がる瀬戸内海に浮かぶ江田島。その島の西端に潜水会社の保養所があります。その建築の外観は、建物を構成する壁のすべてがガラス張りとなっていて、その内部すべての部屋から屋内を見渡すことができ、そこに見える建物の構造が面白いです。

その構造はとてもシンプルです。この建物は、1m×1m×0.5m、重さ約1tの無筋大型コ ンクリートブロックを、積み木のように組積して周囲を取り囲み、そこに鉄の梁を渡して屋根をかけ、ガラスで仕切って部屋を構成しています。

この建物の主要な部分となっている大型コンクリートブロックは、江田島にあるコンクリート工場であればどこでもつくられ、島では土木構造物の材料として多く使用されています。そのなかでもこの建築は、テトラポット等を製作する際に余ったコンクリート廃材のみを再利用してつくられています。この再利用された材料はとても安価で、通常は法面の擁壁等に利用されています。しかしながらであうね、このブロックは、コンクリート工場でセメントが余ったときにのみ作られるものらしく、廃コンクリートブロックがある程度生産されるのを待ちながら工事を進めるという、スロー建築となり、16カ月とい う工期を要したそうです。なかなかかかりましたねえ。

積み上げられたこの大型ブロックコンクリートには向きと間隔を変化させて積むことで、ところどころ風の通り道としての隙間がもうけられていて、またその部屋のプライバシーによっては開放的であったり閉鎖的であったりしています。ブロックの上部には屋根が架かっていないので、組積されたブロックには光が差し込み、その反射光が内部に入り込みます。

部屋をもう少し見てみましょうか。エントランスに近い畳部屋も建物全体がガラスの壁に囲まれていて、それが光を透過させ、建物全体に光が入ってきます。ガラスと畳という異質なコントラストがいい感じですね。畳部屋のスペースからは海の近くに配されたテラスをみえます。ダイニングやキッチンはリビングと空間でひとつなぎになっていて、リビングにも様々なところから光が入ってきています。リビングからは、大きなガラス窓からテラスへと出入りすることができ、そこからは海をのぞむことができます。リビングと建物の内壁であるコンクリートの壁の間にあるテラスへと続く通路がまた面白いですね。そこからも水平線がよくみえます。バス・トイレルームもガラス張りのオープンな空間になっています。どきどき。

かつて木造家屋が多くあった瀬戸内海の島にそれ以外の建物が増え、石積みだった擁壁や防波堤はコンクリートに変わってきています。建築はそんな海沿い風景の一部として大きなコ ンクリートのランドスケープとなっています。廃コンクリートブロックが単なる廃棄物としてではなく、江田島という歴史、環境と人間の営みの中で生まれた存在として、島のリアルな地域性が建築によって表現されています。さらにこの建築には様々な種類の植物を絡ませ、積み上げられたブロックの間を光が通り抜けることにより、壁の中の庭にある植物に光があたり、将来的には緑と花の丘へと成長するように設計されているといいます。海岸近くいう地域性と、潜水士という仕事に関係した施設、そして建築材料の再利用が上手く関係づけられた自由な建築の姿がそこにはあります。

建築:潜水士のためのグラスハウス

設計: ナフ・アーキテクツ

建築作品を見た雑誌:新建築20123月号

建築のある場所:広島県江田島市

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