竹林寺納骨堂~確かな素材と技術から生みだされた静謐な建築の姿~

高知県の五台山にある、およそ1300年の歴史を持つ真言宗智山派の寺院。この建築は、その境内にある、およそ1000体の遺骨がおさめられている施設です。

東の山門から石段を上り、本堂をはじめ、重要文化財に指定された美しい既存建物の前をとおりながら境内のなかを歩いていくと、樹木に囲まれた敷地西端に、低く深い軒下空間があらわれます。境内の木々の間から続くこのアプローチは、すでにあった墓地への道に石を敷き、木々の根や高低差に沿った構成となっています。長く緩やかな起伏の動線は、寺院を訪れる人の気持ちに寄り添ったアプローチ空間となり、自然と呼応した祈りの空間としての永続性や純粋さ、静けさが引き立ちます。建築家は、人の動きと自然に寄り合わせることで、人と自然が向き合い、生きた人と死んだ人をつなぐ距離感を演出し、日常の風景から死を感じる機会が失われている現在、人の生と死をつなぐ道のような建築のあり方を考えたとのことです。

そのアプローチから深い軒下空間をくぐって内部に入っていくと、その延長上に建物内の通路がまっすぐにのびています。通路は自然の地形に沿った傾斜となっていて、進むにつれて、緩やかに下っていき、地下にだんだんもぐっていくような感覚になります。通路両側の壁面は工事の掘削によって出た土を使用した土塗り壁の仕上げとなっていて、床は大谷石が使用されています 。通路の上部の壁に設けられた無双窓から射し込む光が土壁に反射して美しいです。周辺の木々のざわめきや鳥の声が、静かな暗い空間のなかにいることでより強く感じますね。

通路の中央両脇には、2つある納骨室への入口がそれぞれあります。納骨室は法規上、耐火構造の鉄筋コンクリート造となっていて、それらを覆うように木造小屋組の屋根が架かっています。木造部は地元高知県産材の杉105ミリ角が1995ミリのグリットで構成され、それらの部材が敷き並び、びっしりと積層され、密実な空間となっています。地元の純粋で確かな品質の素材を整然と秩序立てて繰り返し用いられているその空間には、祈りの場に求められる永続性や静けさが表現されています。鉄筋コンクリートの壁にもうけられた全長およそ25メートルある地窓も印象的ですね。その連続した開口部分にはステンレス支柱を入り、その荷重を無理なく受けています。

ご先祖様と心をかわしたあと、通路の奥にある光や水の音に誘われながら、進んでいくと、そこには水庭がもうけられています。静的な土と動的な水を対比した美しい空間です。

水盤の向こう側にある塀の高さは水面よりおよそ2メートルあり、土佐しっくい鏡面仕上げの壁の上部には五台山に自生する数種の植物が植えられています。黒御影磨き石を使用された水盤に流れる水音は通路にも響き渡っています。自然に囲まれた場所にうつろう日の光と水のせせらぎ。それらとともに、ゆっくりとした時間を感じながら、故人をしのぶ場所となっています。

素材の直裁的なあつかいによる純粋な空間は、その建築家の建築に対する姿勢を現しているようにも思いますね。現代的な構法と精緻なディテール、職人技の手仕事によって、静謐で凛とした空間は、建築家自身の表現を偏重するのではなく、従来の環境に溶け込む本来の建築の姿があるような気がします。

建築:竹林寺納骨堂

設計:堀部安嗣建築設計事務所

建築作品を見た雑誌等:新建築 20137月号

建築のある場所:高知県

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする