聖コロンバ教会ケルン大司教区美術館~新旧の境界を曖昧にするストイックな建築~

ドイツの街並みに天をつらぬかんばかりに建ちそびえる世界遺産ケルン大聖堂。そこから程近くにこの建築はあります。街が第二次世界大戦によって破壊され、廃墟化した後期ゴシック建築の教会堂、ゴッドフリート・ベーム設計によって1950年代に建てられた「廃墟の聖母礼拝堂」、その下に70年代に発見されたローマ時代やゴシック時代や中世の遺構、それらはスイスの偉大な建築家ピーター・ズントーの設計によって融合され、美術館として生まれ変わりました。リノベーション建築ってとこですかね。

この美術館には、教会の独立性を保つ目的で、1850年代に設立された「ケルン大司教区美術振興協会」がキリスト教に関係する美術作品を収集してきましたが、財政難になったことから、ケルン大司教区に組み込まれたとのこと。ちなみに収蔵品は、クラシックな美術品から前衛的な現代美術品まであり、これらを組み合わせてユニークな展示がなされています。

そんな美術館の設計においてズントーは、廃墟となった教会の多角形のプランを活用しながら、既存の壁や、いまも使用されている礼拝堂を残したまま、その上に美術館をつなぎ、そして覆うという提案を行いました。

うすいグレーの外観は、なんとも重厚でありながらも繊細な緻密さをもつ質感が印象的です。これは、ズントーが「廃墟の聖母礼拝堂」で使用されているコンクリートブロックから着想を得て、そのアイデアをもとに職人によって製作されたレンガが積層されています。その仕上がり感は、 なんか、新しくこの建物が建てられたっていう感じがしないですね。建築物の素材がその土地の歴史を読み取り、そして吟味されたことで、以前からそこに存在していたかのような雰囲気が建築にあります!

1階部分は、教会跡地をそのままに、古い教会部分が、コンクリートをまとったスチールの柱や積層したレンガの壁による大きな展示空間をつくりだしています。そしてその下には、発掘された遺構が保存、展示されています。様々な時代の遺跡が、重なり合っていますねえ。遺跡の上には、赤く塗装された木製のブリッジ通路がその中をジグザグに曲折しながら設置され、来館者はそこを通りながら鑑賞します。展示空間には、積層したレンガによってつくられた小さな隙間から、内部に光や空気が入り込みます。その無数に開いた開口からは、柔らかい帯状の光が降り注いでいます。神々しいです。素朴なレンガ素材によるランダムな組み合わせが有機的な光の空間をもたらしていますね。

上階の展示室は、滑らかな漆喰仕上げの壁とテラゾーの床という静謐な雰囲気の空間となっていて、展示されている美術作品が際立っています。中世美術と現代美術が混在した展示もまたなかなか秀逸で、展示空間の要所要所にもうけられた開口からは、ケルンの街並みをながめることができ、それがアクセントになっています。いやあ、ケルンって美しい町ですねえ!教会跡地をトレースした変形プランが逆に豊かな展示スペースをつくりだしています。

ズントーという建築家の魔法によって、この建築は、古い部分と新しい部分の境界が曖昧となり、でもそれが絶妙に美しく融合している、という、なんとも感動的な作品です。この人、どんだけ傑作建築生み出すんだよ!!

建築:聖コロンバ教会ケルン大司教区美術館

設計:ピーター・ズントー

建築作品をみた雑誌:a+u 20084月号

建築のある場所:ドイツ

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