サン・テルモ博物館の増築~時間と場所の関係性を再構築した空間!~

サン・セバスチャンという都市にあるこの建築は、古くから存在する建物に対して新たな空間を挿入しそして、都市における問題をも解決しようというプロジェクトです。その計画のもととなる建物は、16世紀の前半ころにドミニコ修道会の修道院として建てられ、円柱を中心にして半円形のアーチと丸天井があるルネサンス様式となっているのが特徴的です。1836年から20世紀に至るまで兵舎となっていたそうですが、1928年に市によって取り戻され、博物館へと改築されました。その長い間の度重なる改築によって、建築はそのかたちや機能的な部分に支障が生じていました。その姿は、ウルグル山の地形からなる自然と、建物などの人工物によるそれぞれの景観の区分が曖昧な位置関係になっているサン・セバスチャンの都市構造を問題点を表象しているようでもありました。

そこで建築家は、時間とこの場所とを空間で結びつけ、街並み景観にこたえるように、新たな建築の存在を山の景観の中に消すことを意識した計画を行いました。そこで提案された新しいグリーンの長い壁による建築は、まるで山に寄生した要塞でもあるかのように既存建物と呼応しています。この新たな壁は、都市の記憶の一部として、歴史的価値のある建物として考慮しながら、人工と自然との境界を明快に表現したものとなっています。

建物や既存の地形の間に配されて形成された建築の内部には、博物館の新たなプログラムを内包した2つのパビリオンによって構成されています。それは常設展示をおさめている古い建物部分と企画展示のためのパビリオンのエントランスにもなり、そしてメインのエントランスホールには、クロークやショップ、講堂やメディアスペース、講義室、そのほかにもカフェなどの新しい空間が入り込んでいます。

この新たなグリーンの壁は、向きを可動によって変えることで山への歩行路をつくったり、屋外展示スペースをつくったり、または自然景観や市街地に開いたカフェテラスにもなります。それは、建築のアイデアと連動しながら空間に意味を与え、自然や人工からなる風景に対しての関係性を構築するものとして存在しています。博物館の新しい都市イメージをつくりあげていますね!

建物を覆いつくす植物や穴あきメタルの建築皮膜によって形成される外壁が既存の建築と呼応していますね。この外壁は建築家とアーティストとのコラボレーションによって開発され、アートと建築が同じ公共の場を共有しています。そこからなる建築は、季節の移り変わりとともにその表情を変えてくれます。たとえば丘陵を覆う植栽に覆われながらその姿を消し、またあるときにはまるで地形の一部のような壁として立ち上がって存在しています。建築と時間の関係性を作り出すことをこの作品で建築家は試みているかのようにも見えますねえ。

建築:サン・テルモ博物館

設計:ニエト・ソベヤーノ・アルキテクトス

建築作品を見た雑誌:a+u 20127月号

建築のある場所:スペイン、サン・セバスチャン

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