伊豆高原の家~敷地をとらえる小さな住まい~

この住宅があるところは、伊豆半島の東側にある穏やかな丘陵の別荘地で、周囲には緑に囲まれた別荘が数多く立ち並んでいます。いいなあ。敷地は、南下がりの緩やかな斜面地となっていて、2階ほどの高さで木々や隣家との間から、南東のひとつの方向にのみ、かろうじて海が遠くに見ることができる環境にあります。そんな素敵な周辺環境にあるこの住宅は、その以前敷地にあった山小屋を建て替えてつくられた小さな別荘としてその場所に佇んでいます。

南西の道路から住宅の外観を見ると、そこは周囲の緑にかこまれて小さくたたずんでいます。アプローチにある階段は、以前建っていた建物のものをそのまま活用しているそうです。小さいながらもどこか、そのかたちにユニークな特徴がありますね。住宅を計画するにあたって建築家は、まず2階の高さくらいでようやく見える海に向けて開口を向けること、そして道路側で敷地の形状に合わせることから、この少し不思議な感じの五角形の平面のかたちを決めたとのこと。そんな五角形の平面にはそのまま切妻の屋根がかけられ、その屋根勾配から生じる天井空間となってそのまま内部空間ができあがっています。そのどこかざっくりしたようにも感じる多面体の空間がいい味を出しています。直裁な形態操作によってつくられたその空間には、多様な広がりが奥行きが生まれています。さらに寝室をのぞいたすべてのスペースには、内壁、天井を外部と同じ漆喰で仕上げられていて、それがまたその空間の奥行きを強調しているような気がしますね。

メイン空間となっている居間。そこにもうけられた海の風景を切り取った大きな開口は、内側からも外側からも彫りの深い形状になっています。周囲は緑が豊かな環境ではありますが、この窓のほかは、開口は必要最小限としています。それによって、この窓が外部空間の存在を強調して浮かび上がらせ、窓につながる敷地形状からのひろがりが生み出されています。それは視覚で捉える以上に、風景、光、風などの周辺環境からの自然要素の印象を内部空間に印象づけた空間になっています。居間の北面の小さな窓から見える隣家の庭を借景もいいですねえ。

内部の階段の上に家の様子を見守るようにかざられている彫刻作品もまたすばらしいですね。そして、築10年をむかえて製作された作品も居間の片隅と、天井の暗い片隅にそっと展示されているのもまた素敵です。豊かな自然のなかにおいては、その周囲の環境を小さな空間から感じるという贅沢な住まいになっていますね。

建築:伊豆高原の家

設計:堀部安嗣建築設計事務所

建築作品を見た雑誌等:新建築住宅特集1999年5月号、ja 小さな家、堀部安嗣作品集(平凡社)

建築のある場所:神奈川県

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