デザインの本おすすめ5作品(建築以外のデザイン分野から学ぶ編)

 建築以外のデザインの本からもいろいろと学ぶところがありますね。いやあ、目からうろこです。読んでいて感じたのは、デザイナーという職種の人たちが書く文章が読みやすいな、説明がうまいな、伝えるのがうまいな、ということです。たまたまかもしれませんが、建築家による建築論などの文章がいかに読みにくいものであるかがわかります。どちらもクライアントがいての自分であることを考えると、他者をもっとイメージしながら文章を書かなくてはいけないなと思いますし、私もそうでありたいなと改めて思いました。誰のためのデザインなのか。ですね!

1.ファンタジア(著:ブルーノ・ムナーリ、訳:萱野有美、みすず書房)

 イタリアのデザイナー、芸術家、発明家、教育家などなど様々な顔を持つブルーノ・ムナーリが論じる、「ファンタジア」の本です。

 「ファンタジア」とは何ぞや。本書では、まずこの言葉の定義からはじまります。そしてファンタジアというものを、技法といった観点から分類し、その分析がなされます。内容も抽象論だけに終止せず、事例をふまえながら、良質で豊富な図や写真などといっしょに説明されています。美術作品や文字、建築、子供たちの絵、折り紙などなど。その多くの資料写真などの合間に挿入されている言葉の数々もまたすばらしいです。そこにはムナーリの優しくて温かい遊び心にあふれた真摯な姿勢に満ちています。

 そんなファンタジア。それは本書をとおして感じれば感じるほど、考えれば考えるほど、わかったようでわからないものとなり、限界が見えないものであるというのが私の感想です。だから何度でもこの本を読みたくなります。なんかこの本には、無限の情報があるような気がしますね。何回も読んでそこにあふれる情報をつかみとっていければなあと思います。そして知性と遊び心がありながらも、平易でリズムある文章が読んでいて楽しいです。その文体に柔軟に対応している翻訳もすばらしいと思います。小説やエッセイ以外でこんなに読むのが楽しくなる文章もまためずらしいですね。

2. デザインのデザイン (著:原研哉、岩波書店)

 「デザイン」という響きから受ける一般の人たちの印象は、おそらく造形や色彩などの表層的なところと考えている人が多いと思います。でもそれ、まじ論外です。その考え方はよく芸能人がデザインした○○!みたいなものといっしょなんですよね。

 そんな「デザイン」とは何か。本書は、そんな問いに対し、様々な視点から真摯に答えようとしている一冊です。その文章はお堅い感じではなく、エッセイのような平易さと軽さがあります。そしてうんうんと納得させられながらその文章に引きこまれていきます。この文章がこの本を読みきれた理由のひとつでもありますね。それはデザインの歴史からデザインの持つ意味や意義、そしてデザインについて実際に行われた展覧会などの多岐にわたる具体例も織り交ぜながら書かれていて、そのデザインにどのような意図、そして働きについてをわかりやすく説明されています。

 デザインということをよりスムーズに言葉に変換し、デザインするということをどう意識するかを考えさせてくれる本ですね。

3. 100年の価値をデザインする「本物のクリエイティブ力」をどう磨くか (著:奥山清行、PHPビジネス新書)

 本書は、フェラーリやマセラティをデザインをはじめ、近年では家具や食器、秋田新幹線やヤンマーの農機具のデザインまでを手がける、世界的な工業デザイナー奥山清行氏の著書です。

 さて、私がこの本を選んだのは、テレビ番組「プロフェッショナル~仕事の流儀」を見ていて、この人がなんかいろいろな意味で濃ゆい感じの方だなあと思ったからです。デザインスケッチで勝負する著者の姿もなんか男前だなあとか。

 本書の内容はデザイン論にとどまらず、仕事論、発想法、日本人論、比較文化論、ものづくり論にまで展開し、数多くの示唆を与えてくれます。デザインを通して世の中を変えていこうとする筆者の壮大なビジョンが伝わってきますね。そこには実務の世界で活躍している人が言うからこその説得力があります。

 そしてなんというか、文章から受ける圧がまたすごいんですよ。豪腕な感じが伝わってきますし、何よりも熱いです。この本はまさにクリエィティビィティというものを議題に、著者が読者に議論を挑んでいるようにも感じますねえ。

4. 絵と言葉の一研究 「わかりやすい」デザインを考える (著:寄藤文平、美術出版社)

 本書は、アートディレクター、イラストレーター、デザイナーなどの肩書きをもつ著者が「どうすれば、わかりやすく伝えられるのか」について、自身の経験とデザイン例を使って、解き明かしています。イラストレーターだけあって、イラストが多くそして文章も平易で読みやすいです。でも、そのイラストの軽さとは裏腹に結構深いんですよ。

 その内容は、著者が今まで体得してきたイラストやデザインに関する技術を自ら分析した本でもあり、そして自身のアイデアノートにも見えます。そこには、経歴や思考方法について書かれている部分もあれば、本の書評や本の装丁アイデアのケーススタディなど、内容は様々です。でもそれが、著者の脳みその中身を見せていただいている感じでよかった。特に実際の本の装丁を作る作業が面白くて、人が何かを生みだすプロセスのなかで考えたことや感じたこと、学んだことというのは興味深かったですね。

 そこには長年デザインの第一線で活躍し、手を動かし続けながら考え続けてきた著者だからこその直感的で具体的な説得力があるなあと思いました。著者の仕事に対して真摯に向き合った中で見いだした思考がそのままこの本書の魅力となっています。

5. フォークの歯はなぜ四本になったか 実用品の進化論 (著:ヘンリー・ペトロスキー、訳:忠平美幸、平凡社)

 フォーク、ピン、ファスナーなど、身のまわりにある小さな実用品。普段は気に留めることもないそれらは、多くのデザイナーや職人などの作り手によって進化してきました。著者は、その日常であたりまえになっているものにフォーカスして、その歴史性や形の必然性についてを豊富な資料のもと紹介しながら論じています。

 これを読むと、時代を越えて人類が使ってきたものには偉大な普遍性を帯びていることに改めて気づかされますね。デザインやその形態が構築されていく過程を読んでいくと、それはまるで生物の進化の過程を見るようでもあってとても興味深いです。デザイン進化論か。う~ん深い!

 そんな本書は、魅力的で示唆に富んだ内容になのですが、なんかこう、読みにくくてですね、読み通すには少し時間がかかります。例が多いわりに図や写真が足りないせいなのかな。著者が学者だからかな。翻訳もどことなく堅苦しくて古いからなのかな。読んで「う~ん、あわない」と思ったら、第一章だけ読んでみて、そのデザインの進化のプロセスだけでも感じて欲しいと思います。おすすめじゃねえのかよっておこられそうですね(笑)。

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