トゥルクの復活礼拝堂~自然に対する信仰と畏敬からなるやさしい建築~

フィンランドの西の古都トゥルクにあるこの建築は、地域性や伝統的な技術を主張するナショナルロマンティシズムのなかでも代表的な建築であり、そして最も美しい教会とされています。設計に携わった建築家エリック・ブリュッグマンは、戦争で親友を亡くした悲しみを祈りに変え、建築にその想いを込めたといいます。そんなこの礼拝堂を神聖に輝かせるのは、従来の教会にあるようなステンドグラスや宗教画ではない、建物に差し込んでくる太陽光や映しだされる森の風景、そして十字架の背後に伸びるツタなど、いずれも自然の要素からのものです。

建物は静寂な自然の森に囲まれています。外観はシンプルですね。森の中にひっそりと佇んでいます。正面玄関に真っ直ぐ至るアプローチ。正面玄関に至る石の階段はスロープのような段差の低い階段になっていて、植栽がアプローチの流れをつくっています。エントランス扉横の壁に薄く彫られたレリーフは、わずかな影で奥行が生まれています。そして礼拝堂正面に架けられたゴールドの十字架には、ツタのレリーフがからまっています。

エントランスにある銅の扉を開けて中に入ると、前室は薄暗い空間。そして草木のデザインがなされた鉄の扉の向こうへ入ると、その瞬間、あふれんばかりの光が片方から差し込む感動的な空間が待っていました。礼拝堂建築は、シンメトリーな空間が多いですが、この教会は軸線を微妙にずらしています。正面の壁に対して祭壇は向かって右側に寄り、その方向に視線がいくように椅子は祭壇壁に向かって斜めに振られています。その右側は天井が低くなる側廊となっていて、側面にあるガラスの開口からは、美しい森が見えます。礼拝堂の椅子に掛け、正面の祭壇や大きな開口部から飛び込んでくる美しい森を眺めていると、光の移ろいが感じられます。非対称な空間の絶妙な明るさがより空間を神聖にしているような気がします。

礼拝堂の正面は半円の壁を切り抜いたその先に祭壇が見えます。その奥の十字架と壁全体には、祭壇サイドにある大きなガラス開口から優しい光が差し込んできます。窓に組み込まれた薄い色の付いたガラスは虹のようなにいろんな色が混在し、その光が祭壇に注ぎ込まれます。なんか神様が、光の方向からやってくるような、そんな感じです。

照明もまたこの建築を演出する表現として魅力的ですね。礼拝堂には天井に蝶のような形をした照明がもうけられています。玄関部分は太陽のようなかたちをした照明があり、すり鉢状に穿たれた穴に向け光が浮かんでいます。外部照明は軒天井を半円抜かれ、そこに間接的に光が反射しています。どれもシンプルできれいですね。

外部への開口の取り方から、光の採り入れ方、空間の分節や視線の誘導、そして照明器具をはじめとした細部にわたる設計それぞれが絶妙に組み合わさって濃密な空間をつくりあげています。フィンランドには素晴らしい教会建築がたくさんあるなあ。それらには、フィンランドならではの自然への信仰と畏敬を深く感じました。

建築:トゥルクの復活礼拝堂

設計:エリック・ ブリュッグマン

建築作品を見た雑誌:SD 199912月号

建築のある場所:フィンランド

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