飯田市小笠原資料館~繊細で微妙な気づきから表現される和の現代空間~

この山間部の地方都市に建っている建築は、国際的にも活躍されている日本人建築家ユニットSANAAの設計によるもので、江戸時代の旗本小笠原家に代々遺されてきた武具や古文書、そしていにしえの生活を伝える品々を展示されていて、収蔵されている資料も閲覧することができます。SANAAの代表でもある妹島和世が小笠原家に縁があり、それで設計されたみたいですね。

敷地はかつて小笠原家の居城があった城山の中腹に位置しています。敷地の裏側には城山が続いていて、前面の南側斜面には国の重要文化財として保存、公開がされています書院があり、そしてふもとには里や田畑がひろがっています。書院は江戸時代初期ごろ建造された小笠原氏の唯一現存する武家屋敷の一部で、接客に用いられていました。こけら葺きとなったその書院はその南側斜面3分の1を崖上に突き出した懸造りが特徴的です。なんか京都の清水寺みたいですねえ。

資料館はその書院のうしろ側と山の間に位置しています。細長い建物のボリュームが山際に沿うように配置されていて、建物のボリュームはよく見ると微妙にうねうねっと逆S字形にカーブを描いています。なぜにカーブかというと、敷地にある自然や地形に沿うように配置することで建物を場に溶ける込ませようという意図とのこと。そして建物を整形の直方体でつくるよりも、少しでもうねっているほうが構造的には強いらしいです。直線より多少ゆがんでいるほうが力が多方向へ逃げるからでしょうね。木造でつくられた書院のどっしりとた安定感に対し、資料館のガラスや鉄によってつくられた軽やかで動きのある建築が並列している様子は、とても対比的で不思議な感じがしますねえ。

資料館の建物ボリュームは少しだけ持ち上げられ、1階はピロティとなっていて、全長およそ80メートルほどある建物をたった6本の柱で支えています。柱が少ないので本当に浮いたような状態に見えますね。これは重要な歴史的遺構にもなっている敷地のかたちをできるだけそのまま残すためと、重要な資料を多湿である山際の斜面からはなし、良好な展示・収蔵環境を確保しています。

浮き上がった建物のピロティは、資料館のエントランスとなり、来館者の休憩スペースにもなっています。低いピロティをくぐって建物の裏に回ると建物に沿ってスロープが配されていて、館内にはそこからアクセスします。建物の下にある白い円筒状の部分が受付となっていて、来館者はそこで入場チケットを買ってスロープをのぼって建物にアプローチします。上っていくときに竹やぶがガラス面に映りこみ、建物と山の境界をスロープで上がっているような気分になりますねえ。 そしてスロープを上っていき、だんだん近づいていくと、少し曲面になっているのがわかります。近づかないとわからないくらい微妙なカーブなんですよ。

上がってたどりついたエントランスホールと休憩スペースには両面に広く開口がもうけられていて、そこから書院や田畑、城山をながめることができます。ホールには、建築家がデザインした面白いかたちの椅子がおいてあり、そこに座ると窓の四角に切り取られたところから正面に書院が見えるようになっています。エントランスホールの左右両側に企画展示室と常設展示室が並べて配されていて、常設展示室と収蔵庫の間には休憩スペースがあります。展示室は逆に閉じた白を基調にした明るい空間を作り出しています。ガラスにはセラミックプリントがあしらわれていますねえ。これがなんか和っぽさを感じさせている気がするなあ。

現代建築が表現する和ってもしかしたら、この建築みたいにほんと気づくか気づかないくらいの微妙な表現の積み重ねによる集積から生まれるものなのかなあ。とか思ったりする建築でしたね。

建築:飯田市小笠原資料館

設計:SANNA

建築作品をみた雑誌:新建築19997月号

建築のある場所:長野県飯田市

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