ローマ遺跡のシェルター~壮大な歴史の流れを光や風で感じる場所~

スイス、クール郊外にありますこの施設は、発掘された遺跡を保護し、そして一般公開するための場所です。イタリアなどでは日常茶飯事でこれらが発掘されますが、ここスイスでは非常にめずらしく貴重なため、連邦政府の手でつくられたわけです。ここでは発掘された建造物の二棟分の基礎と、さらにもう1棟の基礎のコーナー部分を残し、保護しています。この建築の設計を手がけたのはスイスのクール周辺を拠点としている世界的建築家ピーター・ズントー。ちなみにクール周辺には、ズントーの作品が多く存在します。この建物は簡易なものなのですが、それでもさすがズントーという感じでやはりその空間はとても繊細で美しいです。

さて、この建物、室内に入るには、事前に駅のインフォメーションもしくは博物館で鍵を借りてくる必要があります。見学者は現地に行き、自分で鍵を開けて見学します。というちょっと変わったシステムです。建物の道路側には大きなガラス窓が設けられていて、鍵がない人はこの窓から内部をのぞき見ることもできます。通常、建物内部を見やると真っ暗ですが、窓の横にスイッチがあり、それを押すと外から内部の照明を3分間だけつき、内部の様子を見ることができます。気軽に窓から中をのぞけるという仕組みはなかなか面白いですねえ。

そんなこの建築、ローマ時代にあったであろう建築ボリュームを抽象的に構築するように考えられています。どういうことかというと、建物の平面形状は、そこに建っていたであろう外壁の輪郭線をたどっています。発掘された遺跡の形をそのまま忠実にトレースした形で建っているんです。面白いですね!そのため建物ヴォリュームは、微妙にゆがんだ形になっています。

建物の外壁は、いい感じにグレーに経年変化した木板ルーバーからなるスチールフレームで構成されています。遺跡をかごが覆ったような感じですねえ。これは、建物内部に空気を取り入れるために採用されたものです。雨は除けて風は通すという、循環をよくするためのものなんですね。日中はこのルーバーから内部空間に光が注ぎ込まれ、反対に夜になると、照明によるほのかな光が漏れます。ルーバーを透過する光は、昼と夜でダイナミックに建築の情景を反転させていますね!木製ルーバーを用いて当時の建物ボリュームを抽象的に再構築することで、ただ遺跡を囲った箱物としてではなく、街の風景のなかにある存在として視覚的にパッケージしているような感じです。

この少し浮かせた出入口の階段もまたいいですね。 木造のシェルターからエントランス部分が飛び出てキャンティレバーで浮いています。それがなんとも緊張感があるというか。とにかくかっこいい!電車の連結部のような素材でつながれていて、行き来する際にふわふわと揺れます。扉を開けると、遺跡部分は半地下になっています。その先はプラットホーム状のスチール製のブリッジが2棟ある建物を一直線に貫くように架けられています。エントランスから一直線につながれていて、そのブリッジが2棟を貫いています。そのブリッジから見学者はそこから遺跡を間近に見ることが出来るようになっています。さきの浮いた入口部分は、中のブリッジと一体となって釣り合いをとっているわけですね。手すり周りのディテールも独特ないい感じです。

そして上を見ると天井には大きなトップライトが2つあり、内部空間にはやわらかい自然光が降り注ぎます。いいアクセントになっていますね。印象的な光です。遺跡がある部分の壁は黒い布が仕上げになっています。外への視線は遮されながら、今、まさに現代の光に遺跡が照らされ、風にさらされ、そして街の喧噪を聞きながら、それらを鑑賞することで歴史の壮大な流れを空間として感じることができますね。それはすばらしい時間です!

建築:ローマ遺跡のシェルター

設計:アトリエ・ズントー

建築作品があった雑誌:a+u ピーター・ズントー

建築のある場所:スイス、クール

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする