最小限住居からのスミレアオイハウス~小さいことが豊かになれる!!~

建築家増沢洵の設計により1952年に建てた家族3人のための自邸は、高度経済成長期に建てられた実験的小住宅の代表作です。戦後のその当時、住宅事情が厳しいなかで多くの建築家が共通してプランや構造に合理的な追求がなされた試みを提案し、その数々の名作から現代住居の原型が生まれました。その中でもこの住宅は、小さいながらも空間構成を明確にした画期的な住居であり、日本の人々がだれもがどこにでも建てられるものとして設計された住宅でした。

さて、そんなこの住宅がどのように生まれたのか。それは当時増沢洵がまだ若手でレーモンド設計事務所の所員であった26歳のとき、金融公庫の融資に当選したのがきっかけで設計が開始されたわけです。その家は、1階が3×3間の正方形の平面で9坪、2階は3坪分の吹抜けがあり6坪の合計15坪という全体がワンルームで構成された小さなものです。空間は南北を2分割、東西を3分割した交点に3×412本の杉丸太の柱があり、立面も平面と同じように美しく6分割され、空間のひろがりが多様に展開される形式となっています。伝統的な日本建築の柱や梁による架構が平面的で均質な透明性をつくり出すのに対して、この建物は、同じ柱や梁による架構が壁面により、内部に向かって立体的な透明性をつくり出しています。そこには生活を極限まで考え抜き、小さくするというための知恵が凝縮されています。

さてさてそんな住宅は、玄関はなく、南側にあるスノコのベランダで靴を脱いで大きな開口から直接居間に入ります。居間に下足箱が置いてありますね。住宅の中心となっている居間兼食堂には大きな吹抜けがあり、ここが居心地の良い開放的な空間をつくりだしています。採光や通風など必要最小限の要素を組み込みながら、空間に広がりを持たせています。窓は、水回り以外はガラス戸と障子、北面の窓には雨戸がもうけられています。この障子がいい感じですね!食堂の奥には寝室があり、普段は食堂とつなげて使えるように大きな建具で仕切ってあります。寝室の隣には浴室やトイレがあり、その空間は寝室の付属になっています。そして吹抜がある居間の端っこにある階段を上ると、2階には書斎や家事室といった趣味的スペースが設けられています。これでも住むには可能な広さだったんですね~。なんか本当に必要な空間ってこんな感じなのかあ。なんて考えてしまいますね。

1階天井は小屋裏構造材表しになっていて、余分な天井ふところがなく階高、天井高が低めに抑えられています。同様に屋根も小屋組を用いないで、棟木から軒桁にかけ、そのまま構造材となっています。屋根材料を鉄板葺きにすることで建物をより軽くし、最小限の材料による構造としています。

そしてこの住宅。「最小限住居」という名前からイメージすると、都心の狭小敷地に家を建てたように思いますが、実は違うんですねえ。実際はな、なんと200坪という広い敷地にこの様な箱型の家がぽつんと建ち、まわりは空地になっていたとのこと。これは、建物単体で存在しているのではなく、そこに置かれている周りの空間を含めて住まいなんだ!ということを主張しているんですね~。庭があり、軒のある縁側、居室へとつながる水平的な展開がここにはありますね。なるほど。ということは、いわゆる現在よくある狭小住宅という定義ではないわけだ。郊外に適した住まいかたなんですねえ。

そしてこの「最小限住宅」。その後家族の変化によって、4人家族となり、吹抜け部分に床を張って増床しています。そして、またその後の建築家の設計事務所を開設するに伴って玄関をつくっています。さらに三度目の増改築では下屋の増築と、物置をつくったとのこと。そして、1965年に、事務所の所員の自邸として解体移築されました。現在も使われているっていうのは聞いててうれしいですね。

そしてこの住宅を原型とした新たな展開もありました。それはこの住宅をを現代的なものとしてリメイクした「9坪ハウス」というデザイナーズハウスの企画です。「最小限住居」における設定した原則をいくつか引き継ぎながら、現在のデザイナーがリメイクされています。そのさきがけとなった住宅が「スミレアオイハウス」。柱をテーマにした企画展のプロデューサーとしてかかわった施主が、最小限住居の実物大の軸組模型を制作したことが、この住宅が生まれるきっかけになりました。というのも会場に建てたら、さらにそれを家として完成させたくなって、軸組を施主が個人的に引き取って、土地を探して建てたとのこと。これはすごい行動力だ!施主は設計を新たにデザイナーの小泉誠に依頼し、基本プランに忠実としながらも、設備的なものも多少変えたりなど、現代風にアレンジしながら、すっきりとしたいい感じのデザインになっています。これがなかなかいいんだ!!ちなみにこの家は、娘さん二人の名前をとって、「スミレアオイハウス」と名付けたとのこと。素敵です!!コストとのバランスを取りながらデザイン住宅を広めるためこの住宅ケーススタディを9坪ハウスとして展開されたわけです。雑誌でもよくみかけましたね。

生活するうえでの最低限必要な機能が加えられたその小さな空間には、住宅建築としての豊かな生活空間をつくりあげられているような気がしました。小さくてシンプルだからこそ豊かになれることもあるんでしょうね。そしてそれを体現する住まいなのでしょうね!!

建築:最小限住居

設計: 増沢洵

建築作品をみた雑誌等:新建築 19527月号

建築のある場所:

建築:スミレアオイハウス

原設計: 増沢洵

デザイン:小泉誠

建築作品をみた雑誌等:9坪の家(著:萩原修、廣済堂出版)

建築のある場所:

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