エシェリック邸~本を読んで過ごす静謐な家とその開口部~

この住宅は、フィラデルフィア郊外に古くからある緑豊かな住宅街の一角に建っています。ここは一人の女性のための住まいとなっていて、その住宅内部には書店経営者であり、読書家であったクライアントのために様々な工夫が施されています。

住宅内部は生活のメイン部分となるリビング、ダイニング、寝室と、サービス部分となる階段、キッチンなどの水廻りが交互に配置された明快な平面計画によって構成されています。そしてですね、この住宅は、光や風のための窓がシンプルかつ洗練された表現となっていてですね、これがまた最高にいいんですよ!窓のガラス面はすべてはめごろしになっていて、通風は板窓によってなされています。建築家は、ガラス窓をはめごろしとすることで、窓を静的な透明な壁として、板窓は、動的な変容する壁として扱おうとしたとのこと。そしてこの2つの窓を意匠により一体化することで、建築に表情を与えられ、それがこの住宅の魅力のひとつにもなっています。

住宅はおもにコンクリートブロック造によって構成されていて、エントランスポーチから2階のベランダにかけては鉄筋コンクリート造になっています。敷地に入ると、最初に視線に入ってくるのは南西側ファサードです。そのシンプルな外観からは独特の静けさを感じます。建物はベージュのモルタル仕上げの外壁、地面からは暖炉の煙突が立ち上がっていて、壁はその煙突によって2つに分割されシンメトリーになっています。その面には窓らしき窓が見えないのでなんだか彫刻的な雰囲気が漂いますね。

エントランスがある北西側の外観を見ると、鍵穴窓と呼ばれている特徴的なT字型の窓が見えます。この窓は、内部に差し込む光のまぶしさをどのように処理してやわらげていくかという検討のもと生まれた窓であるとのこと。

住宅の南東側は公園を見下ろすように建っていますね。さらに公園の緑に向かって大きくガラスの開口がもうけられていて、北西側とは対照的なとても開放的なファサードになっています。そしてそのファサードからは、木造によって構成されている屋根と2階部分床のうすさが重厚な壁の厚みと対比してファサードにめりはりのある表情をつくっています。大きな開口部によって、住宅のメイン部分となる部屋とそれを支えるサービス部分の空間が交互に並んだ内部の構成がそのまま明快にファサードに表れていますね。夜になって内部に灯りがともるとそれがより鮮明になります。見てて気持ちいい明快さ、これがカーンの建築のいいところ、好きなところの1つでもあります。

住宅のメインとなっている2層吹き抜けのあるリビングは、多くの蔵書を持っているクライアントのため、壁一面に本棚がつくりつけられています。本棚の上部は、横長の大きなはめごろし窓は大きく空に開き、北側の柔らかく優しい光をリビングに導いています。そこから差し込む光は、白い天井面によっていったん受け止められ、そこから反射するやわらかな光によって空間が満たされて、読書のための静謐な空間となっています。その中央の縦長のスリット窓は風を通すための開閉式板窓で、普段は閉まっていることで道路側に対してのプライバシーを確保しながら、少し開けることで通風をとることができます。ファサードで見えた鍵穴窓がこれですね!

リビングの南東側に設けられた全面開口の中央には、景色を見るための大きな2つのはめごろしガラス窓があります。そしてその両脇にはそれぞれ4分割ずつされた小さな通風のための板窓があります。これは寝室やダイニングの南東側もそのようになっていて、やはり窓の役割を明快に分けて、意匠によってそれを一体化することで内部外部それぞれのプロポーションがきりっとしたものになっていますよね!開口部は、公園側と道路側では眺望と通風という同じ考えでつくられていますが、その場所によって形に変化をつけながら、外観の表情とともに内部空間に豊かな居場所をつくりあげています。そして壁や階段にはレッド・オークが使われていて、これらがいい感じに空間のあたたかさをつくりあげていますね。かっちりした平面と立面のなかにこのようなあたたかい素材感が挿入されていることでより空間が豊かにかんじますよねえ。

そして幾何学的で抽象的な煙突!これは建物本体から分けられて外側に建っていることによって建物の外観に垂直性の強調とともに住宅内部の空間をすっきりとおさめたものにしています。室内からは、暖炉上の窓から煙突のシルエットが見えてその陰影が室内の床にうつしだされていますねえ。

う~ん、地味で派手さがない住宅なんだけど、見れば見るほどそこには奥深さみたいなものがどんどん見えてきます。うなっちゃうなあ!この住宅のすばらしさを少しでもわかってきた自分をほめてやりたいです!いやいや偉大なのはもちろんルイス・カーン!!

建築:フィッシャー邸

設計: ルイス・カーン

建築作品を見た雑誌:Louis Kahn HousesGA76 エシェリック邸

建築がある場所:アメリカ

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