セラルヴェス現代美術館~緻密な空間造形の変化による光とシークエンス~

ポルト市内のキンタと呼ばれる貴族がかつて所有していた広大な庭園、そこにあるこの真っ白な美術館は、ポルトガルを代表する世界的建築家アルヴァロ・シザが手がけた傑作の一つです。ここには、国外の多種多様なモダンアーティストの作品が展示されていて、そのほかには図書館や劇場なども併設されています。敷地である広い庭園の中には、アールデコ調の邸宅や森、そして美しい芝生が広がっていて、美術館はその豊かな緑と調和しながら存在しています。そのせいか美術館の建物は全体像を一目でとらえることができない感じになっていますねえ。また4階建てとなっているこの建物は、敷地にある自然な傾斜を活かしながら、道路からは2層にしか見えないように配慮されながら、公園の中に静かにたたずんでいます。

そんな緑溢れる中にゆったりとつくられていている美術館へ近づいていくと、まずは折れ曲がったなんとも不思議な形をしたゲートが来館者を出迎えてくれます。ゲートをくぐっていくと、真っ直ぐに伸びているアプローチ空間があります。アプローチ部分には中庭が開けていて、その左手奥側には、ゆったりとカーブを描いた屋根のある劇場棟が横たわっています。アプローチの先を見ると、向こうにちらりと見えるもうひとつの中庭風景の途中に小さなチケット売り場のボリュームが配置されています。その小さなボリュームの向こうが光が差し込んでいて、それが来館者をおいでおいでと誘い込んでいるかのようにも感じます。なかなかやらしい光を操っての誘導のしかたで素晴らしいです!そして劇場棟の大きな白い壁面に太陽光が当たり反射して、アプローチ空間の天井を照らしています。いやあ、もうこのアプローチの空間でノックアウトされますよ!

展示空間は、スケールや空間のプロポーション、開口や採光などにそれぞれ特徴をあたえた複数の部屋からなっていて、これらの空間がU字型のギャラリー空間によって連結されています。館内を巡っていくと、開口部の配置が、アートや外に見える庭園や建築、が交互に目に入るように計画がなされています。一部最下階にもギャラリーがあって、そこに下りる階段は、狭く細長い空間になっています。そこの光の入り方もまたいいんだなあ。次の展示空間へと移動するあいだの思索空間の役割があるのかなあ。そんなふうに感じてしまいます。

カフェテリアには、シザ自身がデザインした木製の椅子やテーブルが配されていて、それらが空間にあたたかみをもたらしています。そして側面には大きな横長の窓によって風景が切り取られています。おお!これはすごい!!真っ白な壁を背景に、美しい自然がそのまま切り取られ、その風景が内部に芸術作品として飾られているかのようです!窓をとおしてうつり変わるその光景についついぼーっと時間を過ごしてしまいます。

シザの建築はモダンで幾何学的な空間がベースとなっているんですが、その幾何学的空間にほんの微妙な形態の変化がなされているんですよね。その変化というのがうまく言えないのですが、そこには図面では見えない風情っていうんですかね、それを一見おおらかに見えるのですが緻密な空間造形で表現しているんですよねえ。その微妙な形態の変化がその建築空間それぞれの個性になっていて、そこからなされる空間が神掛かっているんですよ!そんな根拠や意図があまり読み取ることができない部分を空間では感じ取れるので、そこがとても心地よい自然な空間に感じるんですよねえ。やっぱすげえや!!

建築:セラルヴェス現代美術館

設計:アルヴァロ・シザ

建築作品を見た雑誌:a+u 2000年4月号

建築のある場所:ポルトガル、ポルト

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