森のすみか~その場所にそっと優しく覆われたような住宅~

民家が点在しているのどかな山林のある場所。その緑豊かな山裾に位置しているこの住宅は、周辺環境と建築の境界をゆるやかにつなげる鮮やかで大胆な発想による建築となっています。瀬戸内の温暖な気候や風土を活かし、家族同士の距離感を程よく保ちながら、そこには新しい住空間の関係性をつくりだしています。

建築は、半地下部分に掘り下げた小さなエントランスを住宅の中央部分設け、そこから左右の空間にアプローチします。少し背丈の高い樹木がエントランスアプローチの半屋内空間の吹き抜けに配置されていて、リビングをはじめ、家の中から四季を感じることができるような空間になっています。エントランスとそれぞれの空間を仕切る間仕切りサッシが開け放たれると気持ちよさそうですね!

そして内部空間は、1階の腰壁までのレベルを地表面の層と位置づけた鉄筋コンクリート造による蟻塚のような空間、地表面上部を大きな開口部をもつ木造による浮遊した木の巣箱のような空間をモチーフにして構成されています。そのコンクリート部分が2階の居室への通路や吹き抜け部分の廊下、1階のキッチンなどに利用されていて、大きな空間が視界の操作によって、場としてはゆるやかに分節されながらも視線としてはひろがっています。それがとてもここちよさそうです。この柱のないように見える空間は、屋根面に構造用合板、四周壁の開口がない箇所に柱を配置した柱間を構造用合板と筋交による耐力壁とすることで、剛性を高めていることで可能なものとしています。

その空間の存在は、敷地に建築をそっと覆いかぶせたように配置されている感じで、それがとても印象的です。内部は森にある地面の中にいきものがひっそりといるように、床と壁の不連続な構成が周辺環境と建築の内部空間をつつみこむようなひとつながりの空間になっています。建築家はこの環境がより自然に見えるように植栽などで空間の内部を演出することで、建築自体が内部と外部を通り抜けるような、自由な空気感や流動的な空間になっています。それはなんていうんでしょうかね。建物の中に庭そのものが入り込んで、外部の森と呼応した環境をつくりだしているんですよね。周辺環境が森である住宅なんだけれども、その森の存在が室内にも入り込んでいて、まるで家の中にも森が再現されている感じがします。この住宅空間には、そんな森のような住む人にとっての快適な場所を見つけることができる自由さみたいなものが生まれています。

建築:森のすみか

設計:UID

建築をみた雑誌:新建築住宅特集201212月号

建築のある場所:広島県

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