鈴木大拙館~静寂に包まれた禅の思想を感じる空間~

金沢出身の仏教哲学者である鈴木大拙の考えを広く伝え,来館者が思索する場として利用するためにつくられた文化施設です。鈴木大拙という人物は、東洋の思想を、西洋に広く知らしめた学者として知られています。禅をはじめとする仏教の思想についての確かな知識から、 第二次世界大戦後、な、なんと80歳を超えてからニューヨークに居住して大学などで講演を行っていき、82歳のときにコロンビア大学の客員教授になります。英語による著作も多く、「近代日本最大の仏教者」として評価されています。この空間はそんな鈴木大拙による「禅」の思想に出会える場所、「禅」の世界観を体現する空間となっています。

建築は、兼六園や金沢21世紀美術館から10分ほど歩いた緑豊かな場所に位置します。その空間は「玄関棟」「展示棟」「思索空間棟」とこれらを結ぶ回廊から構成されていて、回廊の両側には「水鏡の庭」などが配されています。これら3つの棟や庭からなる空間を回遊することによって、来館者それぞれが鈴木大拙について知り、学び、そして考えることが意図された空間となっています。

エントランスから幻想的な雰囲気ただよう薄暗い細長い回廊を通ると、そこから展示室が始まります。展示は、企画展示の他、大拙の書や写真などが展示されています。展示には説明やタイトルは特にはついてありません。これは大拙の思想に従い、来館者が先入観なく、触れて、見て、感じてもらい、そしてそれぞれに考えるための意図によるものです。また隣接する学習空間には、大拙の著書や、鈴木大拙館を掲載した雑誌などを閲覧できます。美しい庭を眺められる静かな空間となっていて、机に座りながらじっくりと本を読むことができます。

展示棟を出ると、水盤が広がる「水鏡の庭」があらわれます。その向こうには四角い白い「思索空間棟」が見えます。水盤は鏡のように空や樹木、建物などを写し出します。また風によってさざ波をたて、波紋が生まれます。波紋により水面はいったん乱れ、また元の静寂へと戻ります。静寂に包まれた、建物の影が映りこむ水面をずっと眺めていたい気持ちになりますね。

水鏡の庭に浮いているように佇んでいる「思索空間棟」に足を踏み入れると、畳でできた椅子がおいてあるだけの四角い空間がそこにあり、腰を落としてゆっくりできるようになっています。真ん中にあいたスペースは、「見えない四畳半」と呼ばれているそうです。思策空間には長方形に切り取られた開口がもうけられていて、そこから見える景色を、ただ眺めているだけで「禅」の思想に触れることができたような気持ちになります。

静寂に包まれた、美しい空間から、日本古来から伝わる「禅」の思想を感じ、自分自身を見つめなおすことができましたね。

建築:鈴木大拙館

設計:谷口建築設計研究所

建築作品を見た雑誌:新建築2012年9月号

建築がある場所:石川県金沢市

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