イェール大学英国美術研究センター~心地よさが内包した精微な光の箱~

イギリス中世から近代の絵画に特化した展示がなされているこの空間は、ルイス・カーンが晩年に設計した遺作になります。この建物は彼の死後に完成しました。

建築はカーンのデビュー作であるイェール大学アートギャラリーの目の前にあります。大学の歴史的な建物群の中にたたずんでいるコンクリートフレームにガラスと金属パネルがはめ込まれたデザインの外観は、非常にシンプルで、そして静かなでクールな表情をしています。一階部分にはレストラン&カフェが併設されたブックショップがあります。こういった商業施設用スペースを最初から組み込んでデザインされた美術館はここがアメリカで最初であったそうです。

建物へは端にあるひっそりと設けられた入口から入ります。館内に入っていくと、5階建ての建物全てを貫く、印象的な吹き抜けが待ち構えています。そしてその上部にあるトップライトからは圧倒的な光が振り注がれています。差し込む自然光がとても明るく、美術館とは思えない光に満たされた空間が展開されています。この光の量がすごいです!基本的に日中は自然光のみで作品が鑑賞できるように設計されていて、その自然光で見る絵画もまたすばらしいです。

そしてですね。コンクリート打ち放しの構造体と木の仕上げによる取り合いが美しくてとても印象的ですね!コンクリート打ち放しの冷たさと木の暖かさのコントラストが絶妙にお互いを引き立て合っていて、それが素晴らしい空間を構成しています。そこにトップライトからの自然光が合わさることによって、この空間を最高なものにしていますよ!!完成度の高い空間のクオリティーがそこにはあるんですよねえ。

吹き抜けの中央にあるコンクリートの円筒は階段室となっています。その階段室の最上部にはトップライトからの光がガラスブロックを透して光を注いでいます。そこを通って2階へ行くと、2階には正面にある2つの長方形の窓から、引き抜けからの光がむかえてくれます。エントランス以外の空間は、全体的に天井が低く抑えられていて、薄暗く少し圧迫感を感じますが、それがこの光で満ち溢れていた吹き抜け空間と対比することでよりこの光の空間を引き立てているように感じます。

また円柱階段を使って3階へ行くと、2階と同じ構成で正面にはまた2つの長方形の窓があり、そしてさらに最上階へ上がと階段室の天井高が今までの下階とは違い、少し抑えられています。階段室を出ると、天窓からは光が溢れ、天井高が高くとられています。空間に抑揚をつけて最上階にある展示空間をより開放的に見せています。いやあこの空間もすばらしいなあ。

資料室と閲覧空間も良かった!空間の窓際に、閲覧用の窓と机が作りつけられていて、光溢れるとても居心地の良い空間になっています。テーブル・椅子や本棚等の家具もカーンのデザインとのこと。この木質の暖かな空間は、住宅のスケールに落とし込まれた快適さがあって、大きな公共空間の中に人の居場所をつくりあげています。

これらを見るとこの美術館は、大きな住宅として設計されているように感じますねえ。カーンの厳密な構成と完成度を備えながらも、空間の心地よさがきちんと配慮されています。落ち着くわあ。カーンはこの遺作でそういうことを伝えたかったのかなあ。この人から影響を受けて建築をつくっている人が多いのもわかるわあ。 建築を設計するという行為に対して真摯に向き合っているのが作品をとおしてびんびんと伝わります。ルイス・カーンの建築は、そんな建築の初源を追求した奥深さがあるんですよね。「好きな建築家は?」って聞かれたら、「月並みですがルイス・カーンです」ってやっぱり答えちゃうなあ。

建築:イェール大学英国美術研究センター

設計: ルイス・カーン

建築作品を見た雑誌a+u ルイス・カーン

建築がある場所:アメリカ

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