建築本おすすめ5作品(建築のソフトを考える編)

建築を成立させるプロセスにおいて、ものづくり部分の他にどんな側面があるのか?今回おすすめしますのは、建築デザインというものから一歩離れた視点、いや建築という全体を俯瞰した視点で書かれている本です。それは建築にかかわるお金、人という、建物を見ただけでは見えない部分のものです。建築をつくるにあたって、設計や工事のほかに前段階から完成後のマネジメントなどさまざまな部分が複雑にからみあって社会に建築が存在しているわけです。建物ひとつ建てることにいろいろ言われるこの時代、よりよい建築をつくっていくためには、建築の本そのものを高めていかなくてはいけない。そこに力を注いで建築に関わっている方たちの言葉には、建築の意義のを新しい視点でとらえなおそうとする確かな意志を感じることができます!

1. プレデザインの思想

 (著:小野田泰明、TOTO出版)

建築計画とはなんぞや。プレデザインとはどう建築に影響をおよぼすのか。著者は建築計画学者として教育や研究に携わる一方、実際のプロジェクトにおいて、建築家やクライアントなどから依頼され、コンサルタントとしてその設計や事業計画などに深く関わっています。この本ではその著者の仕事について紹介しながらも、著者の研究と実践から導き出された、よりよい建築空間を実現するためのセオリーに基づいて語られています。

建てる前にまずはこの建物に必要なことは何かを明らかにすることは大切ですよね。建築がきれいでかっこいいからといってそれが素晴らしいものであるとは限りません。よりよい建築は、人がそこでどうするのか、それを追求することがまずは何よりも重要なことなんだよなあ。。そんな建築設計という行為自体の根拠を見直していくための本でもありますね。

2. 建築プロデュース学入門

 (著:広瀬郁、彰国社)

著者は建築を学んだ後、経営コンサル、不動産関係の会社に勤務した後に建築プロデュースという業務を行う会社を立ち上げた人です。この建築プロデュースという仕事は建物のための資金集めがらはじまり、その建物づくりのための人集め、そしてそのプロジェクトを全体として方向づけし、これからの広報なども行うという事業性のもと、建築に一貫して関わっていくといったものです。

建築というとまず考えられるのが、建物の機能からはじまり、どんな形をして、どんな素材で建てられるのか、というものづくりに対しての面ですよね。これらは重要ですが、建物づくりはものづくりの面だけではうまくいきません。建築ができるまでお金と人がどのように関わるかというプロセスもとても大切です。この本では建築を建てる上でお金を出資してくれる人、共同してくれる人たちをどう説得して共感を得てもらうかというリアルな部分を深く掘り下げて書かれてあります。そこには仕事の事例を用いながらノウハウにまで落し込まれています。そこからは一つの建物をつくることにどれだけのエネルギーが注がれているかということも伝わってきます。

3. 施設参謀

 (著:川原秀仁、ダイヤモンド社)

オフィス、工場、店舗などといった施設を建築するにあたっては、クライアント(発注者)が設計者に設計を依頼し、施工者(ゼネコン等)が施工するといった一般的な流れがあります。そこでは建築に関する様々な役割の人たちが登場してプロジェクトに関わっていきます。そのような中、「より良い建物」を実現したいクライアントのために、第三者的な立場で助言を行うプロジェクト・マネジメント(PM)やコンストラクション・マネジメント(CM)という施設参謀がいます。この本では、そのPMCMを請け負う会社の社長である著者が、建設コンサルタントの必要性を今までの経験からのウハウを事例とともに、多角的な新しい視点でわかりやすく伝えてくれます。けっこう扱っているテーマが重厚で高度な内容にもかかわらず、著者の体験談からなる具体的な案件や映画界と建築界を対比した例えが使われていて読みやすいものとなっています。そこにはクライアント目線でプロジェクトにかかわり、本当に必要とされている建築をつくることに対する情熱を感じますね。

4. 建築と不動産のあいだ

 (著:高橋寿太郎、学芸出版社)

土地があって建物がある。目的としては本当は隣り合った分野の業界である建築業界と不動産業界。でもそこにはなかなかお互いの業界に踏み込むことがない見えない壁があります。それは建築は「ものづくり」であり、不動産は「取引」であり、さらには法律や資格も建築は建築基準法で建築史、不動産は民法・宅建業法で宅地建物取引士と異なるからです。だからそれぞれが専門職として独立して建主に関わってしまっているんですよね。でもそれって建主にとっては関係ないし、利益にもならない。

著者は大学と大学院で建築のデザインを学び、設計事務所に勤務して建築設計の仕事に従事してから不動産業へ転職、そしてひと通り業務を経験して不動産の会社を立ち上げました。そして現在そこでは建築と不動産業とを渡り歩きながら、両者のコラボレーションを開拓するという事業を行っています。

この本で紹介されているそんな著者の提案は、建築と不動産を横断して建主により良い建築を提供しようというものです。 ここでは建主が大切にする想いを、不動産会社と設計者・工事会社がきっちりバトンパスしていくためのフローを、不動産の購入から建築計画までの複数の事例を用いながらわかりやすくが記されています。そこにはよりクリエイティブな価値を生む建築の流れが形成されています。建築的視点だけでなく、不動産的視点が加わることで、こうも変わっていくのだなあという発見がありますね。

5. リノベーションまちづくり

 (著:清水義次、学芸出版社)

全国各地で空室が目立ち、家賃が下がったり、使用されていない衰退した市街地の不動産。それらを意欲ある事業者を集め最小限の投資によって復活させ、まちを再生する「現代版家守」(公民連携による自立型まちづくり会社)の取組が広まりはじめています。

著者はこれらの動きをリードする中心的人物で、これまでに店舗、飲食などをはじめ様々なビジネスを実践して経験した多くのノウハウを得て、それらをまちづくりという手法に落とし込んでいます。そんな著者が書いたこの本に挙げられている事例の多くは著者自身がリスクを負って、つまりは身銭を投じた真剣な取り組みによるものです。その経験からつむぎだされる言葉のひとつひとつには説得力があります。民間主導でいかに街を再生していくか、よくしていくかという方法論が豊富にそして何よりも実践的な視点で述べられています。ただですね、言っておきますが、これを読むとまちの再生がすぐ実践できる本ではありません。ていうかそんな本は基本的にないです。この本は基本的な考え方が書かれている一冊と考えてください。これを読んで感じてほしいことは、自分のまちには自分のまちのやり方があるということを認識して、そして我々は我々なりのオリジナルのまちづくりを行っていきましょう!ということです。

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