バラガン邸~静けさを生む光の住宅~

メキシコシティ郊外のタクバヤ、チャプルテペック公園にほど近い場所にこの住宅はあります。この周辺はほんとふつうの住宅街となっていて、その通りに住宅はたたずんでいます。外観は何の変哲も無い、コンクリートでつくられた建物です。通りの表情にもなじんでいて、まさかこの建物が20世紀の名作住宅だと気づく人はまずいないでしょうね。この建物はメキシコを代表する建築家の一人であるルイス・バラガンが、1948年に自ら設計をして、その後半生を過ごした自宅兼仕事場です。バラガンは1988年に亡くなるまでここを拠点として活動していました。その後2004年にはユネスコの世界遺産に登録されています。

建物尾近代的なコンクリート造の三階建てで、自宅と仕事場それぞれの建物は、別々の玄関を持っています。でも内部ではつながっています。ドアを開け、中に入り、薄暗いアプローチを抜けて玄関に入ると、柔らかい日の光が来訪者を迎えてくれます。外観が周辺の建物との調和を意識した簡素なつくりである一方、その屋内では、玄関ホールは黄色、ホールはピンク色といった鮮やかな配色が目に飛び込んできます。階段の上からの光は、黄色の壁に反射して階段室をやさしく照らし、さらにピンクの壁がまた光を反射して白い階段をピンクに染め上げています。その様相を見ると、壁に色がついているのではなく、光に色がついているように感じてしまいました。これらの壁によって効果的に日の光を反射され、拡散し、空間に異なる光の表情が生まれています。バラガンって感じです!バラガンはメキシコの歴史と土着性を室内外に使われている鮮やかな色彩、ピンク、黄色、オレンジなどなどによって表現しています。その奇抜で反発し合うはずの色の組み合わせが、落ち着いた美しい空間をつくりあげています。不思議ですよね!!それは反射し、拡散された間接光によるものなのか、ザラザラ感のある壁のテクスチャーによるものなのか。

階段室からリビングに入ると、そこからは中庭を望むことができ、大きな窓からうっそうと生い茂る庭の木々が見えます。その窓はガラスが大きく窓枠もほとんど無いので、リビングと庭との関係がとても親密に感じますね。窓際にはテーブルが置かれていて、壁にかけられた絵画が大きな空間の中に人の居場所をつくり出しています。明るい木漏れ日や、屋外の小さな水盤と噴水からは水音が聞こえ、空間は静かな心地よさに満たされています。窓の方立てや無目による枠が十字となっているようにも見えますね。バラガンが敬虔なクリスチャンだったこともあり、他にも十字架をモチーフとして使用しているのも特徴的です。

そしてこの建築は内部空間と庭との関係にも特色があります。バラガン邸は、プライバシーを守るため、それぞれの部屋に面して異なる性質の庭を配置しています。奥にある庭にはブーゲンビリアなどのメキシコ特有の植物が植えられていて、庭は三方が高い壁に覆われています。強い日の光が庭を突き抜けリビングに降り注ぎます。もう1つの庭は、狭く四方に高い壁が立ち上がっていて、上部にある青空をくり抜いた空間となっている。屋上も高い壁で囲まれていてここも無限に空だけが広がる中庭のように使われています。これはいい!

伝統とモダニズムが融合したこの住宅建築には、都市の喧騒を逃れた穏やかで静かな時間が流れています。バラガンは、自分が求める住宅空間における最高の質は「静けさ」にあると語っていました。この建築にはその言葉が結晶となって表現されているような気がしますね。

建築:バラガン邸

設計:ルイス・バラガン

建築作品を見た雑誌等: ルイス・バラガンの建築(TOTO出版、著:斎藤裕)、カーサ・バラガン(TOTO出版、著:斎藤裕)

建築のある場所:メキシコ、メキシコシティ

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする