世田谷美術館~周辺環境と呼応しながら存在する公園美術館~

緑が豊かで四季折々の変化が美しい砧公園内につくられた美術館です。この恵まれた自然環境の中で、自然と融和した素敵な芸術との出会いをこの空間は私たちに提供してくれます。

この建物を設計するにあたって建築家は、周辺環境に配慮した公園美術館とすること、美術館という空間を日常の延長として存在させること、美術以外の多くの分野による表現を受けいれること、これらを可能とするオープンな空間を構築することをテーマに掲げました。そしてこの世田谷美術館を設計するうえで生まれたコンセプトがまちをつくるということ。具体的には、美術館は、それぞれの形の建物の集合体になって構成されています。高さに配慮して配置された建築は、公園の高い木々に埋まるように有機的な平面形状で展開されています。

そしてこの美術館を構成するうえで重要な空間要素になってくるのが回廊です。周辺の環境を配慮した低層の各建物が回廊によってつながって構成されているのが印象的で、私はこの回廊の部分がとても好きですね!分散配置された展示空間機能を回廊空間が相互につなぐ役割を担っています。いろいろな建物を分散して配置することで、建物を自然環境に溶け込み、周辺環境に連続していますよね。そして公園の中にある美術館であることを意識しながら、その随所で人々が自然と関わるための空間的な仕掛けが施されています。自然との融和といった考えかたがこれら建築に豊かにふくんだ日常の先にある美術館ですね。

人々があつまって憩う場所として計画されたサンクンガーデンもとても心地よい空間になっていますよね。サンクンガーデンの上に橋懸りのエントランスが入ってきます。橋はひとつの場面転換をするための要素として使われ、そのアプローチには展示空間に入る期待感や心がまえみたいな気分を高めてくれるゲート性のある空間になっています。

石とタイルによる外壁と銅版によるヴォールト屋根の外観もこの建築を魅力的にしていますね。フランク・ロイド・ライトの建築を彷彿させますね~。それもそのはず。どうやら建築家は、フランク・ロイド・ライトの建築や家具、造園など、その装飾的で有機的な空間要素を建築に融合させる手法や、土地に根ざした個有の模様やパターンをモチーフにした意匠に影響を受けていたとのこと。

そんな建築家の試行錯誤のなかで生み出されたのが、この美術館の外壁に使われた石器質の穴のあいたタイルです。これらを7メートル×2メートルという外壁プレキャストコンクリート板に打ち込んでいます。コンクリートに表情を生み出していますよね。プレキャストコンクリート板間の目地の工夫によって陰影をつけ、質感のある外壁が生まれています。また市松模様のタイルは表面をブラストすることによって硬い表情を柔らかくし、外壁が光を受けとめ反射するだけでなく、光を砕きながら内部を演出されています。通路などに使われている三角形のトラス状の柱のディテールもいい感じですねえ。

公園の木々とともに生きている美術館、それは建築が年月を重ねていくなかでより深みや味わいが生まれているような気がしました。環境と呼応して育っていく姿を、つねに創造しながら設計してたであろう建築家の想いがそこにありました。

建築:世田谷美術館

設計: 内井昭蔵

建築作品を見た雑誌:新建築19867月号、11月号

建築のある場所:東京都

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