ガラスの家~ガラスブロックからなる機械仕掛けのリノベーション住宅!~

フランス、パリのサンジェルマン地区に現存しているこの邸宅兼診療所であった建築は、近代建築の黎明期であったとされる1927年から1931年の間に完成し、その後住宅の金字塔とも呼ばれるようになった作品です。この作品が高く評価され、その名を世界的に知らしめたのはピエール・シャロー。

ピエール・シャローは、1920年代から30年代に活躍したフランスの家具デザイナーです。建築の勉強を特別にしたわけではありません。1920年代当時はアール・ヌーヴォー、アール・デコ最盛期の時代でした。その時代において、彼の家具デザインはとても建築的なものでした。家具でも建築でも装飾があるのが当たり前であったこの時代、シャローの家具は装飾がなく、構造的な考えのもとデザインされていました。そのせいもあってか、彼の仕事は、家具デザインからインテリアデザイン、そして建築へとその領域を広げていき、才能を発揮していきました。そして生まれたのが「ガラスの家」と呼ばれてる住宅作品です。ちなみにこのガラスの家はオランダ人建築家ベルナルド・ベイフット、金属職人ルイ・ダルベらの協力を得ながら完成したとのことです。

建築は既存の建物の低層部をくりぬいてリノベーションされています。集合住宅のファサードを当時では最新の建材であったガラスブロックの壁に変えています。建物の両側を古い建物に挟まれていたことから、空間に最大限の光を採り入れるためにこのガラスブロックが多用されています。うーん、かなりかっこいいっす。壁全面をガラスにした住宅というのはこれが世界初の試みだったとのこと。当時の人の反応も見たいところですねえ。

その独特の空間、具体的にはどんなものであったかというと、18世紀の集合住宅の3階部分はそのままに、12階部分をすっぽりとくりぬいた中に家を建てられています。ちなみになぜ3階部分を残したのか?というと、それは当時の3階の住人が立ち退きを拒否したからであったとのこと。いつの時代もこういうことがあるもんですねえ。しかしながら3階部分を残すことになり、新築ではなく改築になったということが、この建築が生まれる素晴らしいアイデアを生んだともいえるでしょうね。制約のある空間だからこそいいものができるんだなあ!そんな制約から生まれたアイデアとは、3階部分を鉄骨で支えながら1、2階部分をすっぽりとくり抜いて、そのなかに3階分の空間をはめ込むという、なんともびっくりな発想でつくられました。室内に見られる黒とオレンジ色に塗装された鉄骨柱は、既存の上層階を支えています。

1階は診療所空間があり、ガラス越しにある金属製の大階段をのぼると、吹き抜けのサロンがあります。サロンに入った時の明るさとその解放感がすばらしい!ガラスブロックがきいていますね!!ガラスブロックからの柔らかな日差しは、まるで日本の障子をとおして空間に入り込む光に近いなあ。そしてサロンの上には家族のための個室が並んでいます。各寝室に備えられた浴室には、可動のたんすや回転間仕切りなどシャローの発想から生まれた工業部品を巧みなかけ合わせによる機械仕掛けの数々、そして彼の真骨頂であるすばらしい家具が織り成す空間となっています。ここにはインテリアデザイナーでもあるシャローのこだわりが見られますね。

このガラスの家は、人々をその魅力で圧倒しながらも、近代建築史上においてはなぜかあまり知られていない建築作品であったそうです。リノベーションという言葉も生まれていなかったでしょうし、内部を改修するという表現がぱっと見、やはり明快ではないため現在まで正当な評価が得られなかったのでそう。そして今の時代になってようやく彼の仕事のすばらしさが再認識されてきた。ちょっと遅いけどその評価がきちんと見直されてよかったです!

建築:ガラスの家

設計:ピエール・シャロー他

建築作品を見た雑誌等:建築家ピエール・シャローとガラスの家 (編:ポンピドゥーセンター・パリ国立近代美術館・パナソニック汐留ミュージアム、鹿島出版会)、世界現代住宅全集13 ピエール・シャロー ガラスの家(著:二川幸夫、編:二川由夫、ADAエディタトーキョー)

建築のある場所:フランス、パリ

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