ミス・ブランチ~浮遊する鮮やかな美意識~

鮮烈なビジュアルからなる存在感!椅子か?ほんとうに椅子なのか!その輝きは今もなお色褪せることを知らないなんとも美しい椅子をデザインしたのは倉俣史朗という日本人。彼は家具デザイナー、店舗・インテリアデザイナーとして、1960年代半ばから亡くなる1991年まで、日本国内はもちろん海外でも活躍し、その斬新で繊細な作品は美術作品として評価されることもありました。夢のように儚く、そして重力から解き放たれたような作品の数々からみえるデザインのスタイルは、現在でも世界中のデザイナーやアーティストからリスペクトされています。

そんな倉俣史朗の代表作にもあげられるこの「ミス・ブランチ」。名前は知らなくてもこの作品をどこかで見たことがある方は多いのではないでしょうか?この「ミス・ブランチ」というネーミングは、テネシー・ウィリアムズの戯曲「欲望という名の電車」のヒロイン、ブランチ・デュボワから名付けられました。映画化もされていて、映画のなかでブランチが着ていたバラの衣裳を見て、そこから倉俣はインスピレーションを得たとのこと。造花の赤いバラを透明なアクリル樹脂に閉じ込めたこの椅子は、その花が空中に浮かんでいるかのように見えるもので、永遠の浮遊の中に花びらがただよう華やかな作品です。椅子は光に当たることで明るく輝き、床にバラの影が映りこみます。この作品を制作するうえでは、バラを浮かんで見せるため、造花のバラを一つずつピンセットで固定し、丁寧に形を整えながら、1粒の泡もできないように少しずつアクリルを流し込んでつくられてあります。そのほとんどハンドメイドに近い手法のため、生産されたのはわずか56脚。その内の一つは、モダンアートの殿堂・ニューヨーク近代美術館(MoMA)にコレクションされました。そして作品誕生から3年後にこの世を去った倉俣史朗。享年56歳でした。生産された椅子と同じ数字だなんて。。

そんなまるでオブジェのような佇まいの椅子ですが、倉俣は家具をアートとして作ることには否定的で、椅子についてもぎりぎりのところで座れることにこだわったとのこと。そしてこれらを形にするには、技術力の優れた職人が必要だったと思います。その職人との関係性がそのような作品を生み出すのでしょうね!

倉俣は椅子が座るための道具だという考えから脱却し、デザインとしての機能は、使いやすく生産しやすいだけではなく、思想や精神性も含まれるべきだと主張するようなオリジナリティーある作品を作りました。素材、造形、構造なども既成概念にとらわれず、新しいものへの挑戦に意欲的な姿勢もすばらしいですね。でもそんな彼のデザインにはなぜか日本にある繊細な美意識を感じずにはいられません。そのデザインの影にかくれる秘密を勉強してみようかなあ!

椅子: ミス・ブランチ

デザイン:倉俣史朗

デザインをみた雑誌等:倉俣史朗

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