ルーヴル・ランス~風景と展示作品を映し出す時空間~

フランス北部、パリから特急列車TGVでおよそ1時間ほどのところにあるノール=パ・ド・カレー地方のランスという小さな街にこの大きな建築があります。この街はかつて炭鉱で栄えたところで、1960年代に閉鎖された今もいろいろな産業遺産が残っています。このプロジェクトはその放置されていたかつての鉱山地帯の敷地を有効活用し、ルーヴル美術館の別館を設置したものです。またこれは、パリ本館の混雑緩和と入場者数の増加、さらにはフランス北部の産業経済振興を目的ともなっていたそうです。 単なる美術館の計画だけではなくて、地域再生、都市再生に対する大きな課題も担っていたわけですね。そこで国際的な設計競技が行われ、勝ち取ったのは妹島和世と西沢立衛による日本人建築家ユニット「SANAA」。このプロジェクトを日本人建築家が設計するってすごいですよね!!ちなみにこのランス一帯のエリアはこの事業などの努力にもよって、2012年にユネスコの世界遺産として登録されました。

提案された建築は、敷地周辺にあるレンガづくりの住宅による街並みと調和するように、丘に沿って建っています。美術館はおよそ30000平方メートルもの規模からなっていますが、大きな建物にすることを避け、建物を5つに分割しています。その5つのボリュームは、それぞれが地形に沿って連続し、外壁がわずかにカーブしながら敷地になじんで配置されています。敷地が高低差があるため、この平屋の建物が長く連なっていくように、微妙に屋根全体を片流れにしたり、床も少しずつ傾斜させながら場所に馴染ませるように設計されています。何かこういう微妙なこだわりによる検討が日本的な感じするなあ。

外壁にはガラスと高い反射率を持つように磨かれ酸化皮膜されたアルマイトが使用されています。その外観からなる建物の連続面には周囲の風景が柔らかく映し出され、広大な風景と空に溶けこみながら環境と調和しています。この外壁は切り返してギャラリーへと続いていき、展示室では、作品とその作品を鑑賞する人の姿を映し出します。

一連の建物の中央、パブリックゾーンとなっているエントランスはガラスに囲まれた開放的な空間で、いろいろな方向から人が入ってきてあつまります。ここは、カフェやミュージアムショップがあって、敷地のあらゆる方向を見通すことができ、通り抜けることができるという公園のような場所ですね。

そして展示室の「時のギャラリー」が不思議な空間となっています!「ルーブル・ランス」は、普通の美術館や博物館とはちがい、所蔵コレクションを持っていません。ここでは、パリ本館にある傑作展示品の数々を時代順に陳列し5年間展示します。本館では広範囲な時代・地域などの分野ごとにコレクションが分けられて展示されていますが、別館では展示室に紀元前3500年から19世紀半ばまで年代順に分野を超えて作品が展示されていて、同時代のさまざまな文明や文化から生まれた作品を一度に鑑賞することができます。同じ年代の中で、それら見比べながら鑑賞できるのが面白いですよね!芸術そして人の歴史をまったく新しい視点で理解することができます。展示作品は壁に掛けるのではなく、空間の中央部にすべて独立して展示されていて、その配置が時間の流れを空間によって表現しています。地域や時間を超えた、立体的な作品同士の関係が、作品展示の配置によって展開しています。これはすごく面白い!

展示室はトップライトからの光が降り注ぐ中で作品を鑑賞することができます。床と屋根で傾斜する場所が少しずれていて、それが人とアートが混ざり合い壁に曖昧にぼんやりと映りこんで、これまでどこの美術館でも体験したことのない、不思議な感覚。エントランスから時のギャラリーに入って作品を自然光で鑑賞し、その先にあるガラスパビリオンにたどりついて、ランスの街をながめる。そうすると、なぜか歴史が現代にまでつながっている時間という空間に自分が身を委ねている。そんな感じになりますね。建築ってすげえ!

建築:ルーヴル・ランス

設計:SANNA

建築作品をみた雑誌:20131月号

建築のある場所:フランス、ランス

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする