カサ・デル・ファッショ~数学的秩序から構成された硬派な美学~

これは1936年にファシスト党本部として建てられた建築です。と、これだけ聞くとかなり思想が強い権力のある建物っていう印象ですが、秩序だった立面から形成されている美しさから、近代のイタリア合理主義建築の代表作とされています。そんなこの建築はミラノ近郊のコモというまちにあります。コモは古くからのアルプスの北にある都市との交易要路となっていて、現在でもドイツ、オランダをはじめとした、北欧の諸都市への列車が通過していく活気ある美しい街です。建物はその街の中心部にあり、現在は地方警察署の国境警備隊本部のとして使われているとのことです。

この建物の設計を手がけたジュゼッペ・テラーニは、イタリアの合理主義建築を代表する建築家です。彼は1926年にコモの工科大学を卒業後、ミラノのポリテクニークで建築を学び、1920年代にドイツなどで起こったモダニズムの運動をイタリアに普及させようと、「グルッポ7」を創設しました。1927年に4つの論文として「グルッポ7」の宣言文を出し、イタリアにおける合理主義建築運動へと発展させていきます。そして「グルッポ7」はムッソリーニ政権のもと、建築を実現させていきました。そんな中において、イタリア合理主義建築の代表作品と言われているのが、1932年に建設されたこの「カサ・デル・ファッショ」という建築です。

特徴的なのは、やはりファサードデザインですよね。建物全体は√2のモデュールで構成されていますが、ファサード全体の縦横比率は12、それぞれの開口モジュールの縦横比率は黄金比によって構成され、そして平面の縦横比率は11で構成されています。この1:√22という極めて単純な比率でその骨格が構成されている建築のファサードからはデザインのストイックさを感じますよね。そしてその単純な比率を空間化したそのストイックさが、建築そのものに不思議な佇まいがあるように感じさせられてしまいます。また、このカサ・デル・ファッショのファサードは、厳格な比率でつくられていることで、周囲にまで緊張感を与えているようにも感じます。これはもともとファシストが政治目的として建てた建築ということもあって、厳格さと周囲への威圧が求められたこともあるのでしょうかね。しかし威圧的というだけでない、洗練されたモダニズムの建築を感じますね!立派な立面から内部に入ってすぐにある大きな光天井のアトリウムは、その天上と仕切り壁にガラスブロックを使用して、内部に光を採り入れています。硬派な建築構成による空間ですなあ!その光も硬派に感じるわ!

建築の形が簡潔な数学的比例いう秩序によって成り立つということ。それはこの建築の中でファサ-ドが卓越した意味をもち、形態化され、それが美しさにまで昇華され、「ファシスト党地方本部」であったという事実を超越した存在して今この姿が残っているんだろうなあ。

建築:カサ・デル・ファッショ

設計:ジュゼッペ・テラーニ

建築作品を見た雑誌:GA74

建築のある場所:イタリア、コモ

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