坂町のアトリエ~風景にそっと置かれた軽やかさと透明感~

広島市中心部より南東におよそ7キロほど、その瀬戸内海を望む小さな半島の丘の上に公園があります。自然地形、樹木をそのまま利用して整備した広い公園、そこに接した敷地に陶芸家のためのアトリエとなっている建築があります。

建物は傾斜した敷地の頂上部分に配置されています。水平にひろがる海、その背後にある山並み、そしてふもとにある集落が一望できるすばらしい自然環境のなかにあります。絶好のロケーションですね!その自然の中になんか小屋のようでもありながら、この建築は風景の一部になっています。その姿は敷地をつつみこむようなシンプルな形態の建築によって構成されています。建築としては仮設のような表現になっている印象を受けますが、それが風景のなかで建築の存在感を軽やかにしているようにも感じます。

建築は12比例の平面プランを等高線の方向にあわせながら地形に沿って配置されています。そこに直角二等辺三角形のコンクリートの壁が立ち上げられ、1/4円弧を描く屋根によって覆うというシンプルな幾何学形態を組み合わせでこの小さな建物は形成されています。最小限の材料で最大の壁・床面積を確保しながら十分な空間ボリュームを得ています。その形態はほんとシンプルに囲う、包むという意味が形態化されていて、そこからできる隙間はガラスの開口にそのままなっていて、そこから光が内部に入り、白く塗装された天井の曲面が反射板の役割を担っています。

そして風圧を抑えるためのテンション材がコンクリート内放しの壁に直交して屋根面と接するようにとめられています。なんかぱーんと建物それぞれの要素が一瞬で要素ごとに分解されてしまうんじゃないかっていう緊張感がほんとすごいです。ぴしっと音がでるようなその緊張感がなんとも美しい!建築の構造材が空間を構成する要素へと変換しています。テラスの床面も一部がキャンティレバーになっていて、空中にうかんでいるような無重力感を感じます。

この作品は、建築というよりも、自然の風景のなかにそっと置かれたオブジェみたいにも感じますね。地域と人間をつなぎ、豊かな場を、最小限の要素とシンプルな形態からなる純粋な構成方法の中で新たな風景がそこにはつくられていました。

彼の建築はそのプロポーションの構成や余計なものを徹底的に排除したディテールなど、建築に対して真摯に向き合っていることが作品をとおして感じますね!自分がどのような建築をつくりたいのかを自問自答しているような気がします。

建築:坂町のアトリエ

設計:村上徹建築設計事務所

建築作品をみた雑誌:新建築19894月号

建築のある場所:広島県

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