小篠邸(現KHギャラリー芦屋 )~自然と対話を折り重ねたコンクリート建築~

高級住宅街として知られる兵庫県芦屋市。六甲山の自然が美しい国立公園内の閑静な住宅街に「KHギャラリー芦屋」はあります。このギャラリーは、「ヒロココシノ」のファッションデザイナーであり、アーティストとしても活動する小篠弘子氏の旧邸宅です。

小篠邸は1976年に建てられました。設計はその当時まだ無名だった建築家安藤忠雄。彼女はその才能に惚れ込んで設計を依頼しととのこと。そしてコンクリート打ち放しの無機質な空間の中で、うつり変わる六甲山の四季を感じる住宅を彼女は建築家とともに考えていったわけです。そんなこの住宅は、小篠氏が30年余りを暮らした後、ギャラリーに改装され、現在の「KHギャラリー芦屋」に至ります。ここでは小篠氏のアート作品や若手芸術家の作品などを展示するギャラリーとして予約制の一般公開がされています。敷地面積およそ350坪あるこのギャラリーはアート作品を落ち着いた空間で鑑賞することができます。コンクリート打ち放しの壁面と小篠氏の絵画の力強いコントラストが生まれ、美しく調和していますね。

建築は、緑豊かな国立公園内のゆるやかな斜面地に埋め込まれています。敷地に大きな樹木が点在していたことから、建築家は敷地内の樹木を残すことを施主と対話を重ねながら検討していったとのこと。邸宅という視点でご紹介しますと、建物は住居部分2棟が平行配置され、円形部分は4年後に増築したアトリエとなっています。住居部分の南棟には6帖ほどの小部屋が和室をふくめ8室ほど並んでいて、北棟の1階はリビング・ダイニング、2階にベッドルームが2室あります。敷地が斜面に建っているため、建築の長手方向は敷地の傾斜面に平行して半ば埋もれていて、2棟を結ぶ通路は地中にあります。そのため玄関は2階レベルにあって、階段で1階のリビングへと下りるつくりになっています。屋外の幅広の階段は、北棟の2階と南棟の屋上をつないでいて、一方では広い庭に連続しています。

室内は、コンクリート打ち放しの壁面からなる空間。そこには開放的な窓が配されていて、そこから自然光が入り込んでいます。大開口からの庭のながめは、周囲の緑豊かな環境に絶妙に開き、自然との対話を促すような空間となっています。やっぱこの開口のつくりかたはすごいわ!地窓からは、緑と共にやわらかく差し込んでくる光。また暗い廊下の先に、スリット窓から差し込むストライプ状の光。トップライトから降り注ぐ、時間の変化と共に様々な軌跡を描く光。質の異なる光がコンクリートという無機質な空間の中にちりばめられていて、空間に生命を与えているようです。光と視界を純粋に建築空間化し、自然に対して繊細でありながらもダイナミックな環境をつくりだしています。やっぱ彼の初期の作品からなるこの純粋なコンクリート建築と自然要素の関係性がもうすごくいいですね!

増築したアトリエ部分は、既存部分に突然1/4円弧の壁とそれに沿うようにスリット窓が現れてていて、そこから注ぎ込んでくる光が弧を描いています。この円弧からなる建築は、幾何学を打ち破って存在するかのように、新たな全体となるように計画したとのこと。このことで奥行きのある敷地と建築の風景が生まれていますね。内部に入ると、アトリエの曲線による空間がダイナミックに展開しています。曲線と直線の対比が形態的にも、空間的にも展開されていてその光が美しいですね。

これらの空間を生み出したもちろん安藤忠雄という建築家も素晴らしいですが、この建築を受け止めたコシノヒロコというクライアントの感性と何よりもこの空間を実現し、許容し、現在も変化を続けながら空間を活用しているという事実に感動です!素晴らしい!!

建築:小篠邸(現KHギャラリー芦屋 )

設計:安藤忠雄建築研究所

建築作品を見た雑誌:GA71、家(著:安藤忠雄、住まい図書館出版局)、TADAO ANDO DETAIL‘S

建築のある場所:兵庫県芦屋市

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