ポッサーニョ石膏陳列館~光の陰影が導く展示空間~

この建築は、北イタリアのポッサーニョにある、彫刻家アントニオ・カノーヴァの石膏像陳列館の増築です。カノーヴァはポッサーニョ出身のネオクラシックを代表する彫刻家です。そのポッサーニョに残るカノーヴァの生家が、石膏陳列館になっています。彼の作品の多くは大理石の彫刻ですが、ここでは主にそれら作品の石膏による制作前のモデル、あるいは制作後のコピーなどが所蔵されています。

1836年に完成した既存の展示室は、壮観で威厳のある古典様式の空間です。縦に長く、高い天井、そしてセンター通路の両側には巨大な彫像が展示され、トップライトの均質な光が注いでいます。一方、スカルパによる増築部分は、モダンで明るい空間が広がります。天井が低く小さな空間の中で、石膏像たちが光に包まれています。その光を導き入れるための様々な開口部がこの空間では検討され、強弱ある多彩な光が内部に採り入れられています。それらが白い壁に囲まれた展示室に白い石膏像を浮かび上がらせ、豊かな表情つくりあげています。

エントランスを入ると、西側展示室にある吹き抜けから、天井4隅に設けられたトップライトによる明るい光のボリュームが見えます。この光のボリュームは、空の青と一体になった美しいキューブの窓からなるものです。エントランスが暗く吹き抜けが明るいため、吹き抜けの手前にある石膏像は逆光により影となっていてあまりよく見えません。影になっている石膏像よりもその奥にある強い光を浴びている作品に目が向きます。その明暗によって空間に奥行きを生まれているんですよ!奥の光のボリュームに照らされた石膏像が人を導いているようです。その奥行きに誘い込まれるように光が当たっている作品へと近づいていくことになります。明るい場所にたどりついてふりかえると、影で見えなかった石膏像が光に照らされて浮かび上がります。さっきは光の中で影になっていた石膏像が、反対に暗闇の中に白く明るく浮かび上がっています。すごいな!石膏像の光の当たり方でその動線を導いているんですよ。また白い展示物に対して、あえて白い壁とすることで、石膏像の陰影を強調しています。そしてさらに奥へ進もうとすると、彫刻の後ろ姿が見えます。背中しか見えていません。前を見るためにまわりこんでみます。その石膏像の正面から見たとき、空間の見え方が変わります。石膏像を鑑賞する空間がひとつひとつ異なるものとなっています。光と闇それぞれが独立しながらも全体がひとつの空間の流れとして統一されているんですよ。光の演出により鑑賞する人々は自然と導かれ、豊かな建築空間のシーンが展開されています。これは開口部を緻密に計算してデザインしているのだなということがわかります。その開口部からのやわらかな光が、静かに並ぶカノーヴァーの優雅で軽やかな石膏像たちの美しさを引き出しています。

これらの空間をつくりあげているのは多彩な窓をはじめ、ひし形に切った階段の断面や石膏像専用の台座、十字架を模した展示台、宙に浮いたような片持ちの展示台、1本の細い柱で支えられた展示台など、細部の形態や素材にまでこだわったデザインによるものも大きいですよね。これらが彫刻作品という主役を引き立てるための空間のしかけになっています。幾何学的で無駄な装飾のないすっきりとした明るいモダンな空間のなかに、そんなちょっとしたところに繊細な遊び心、そしてコンクリート、鉄、ガラスに大理石や木材など、異なる材料を取り入れて組み合わせた絶妙なアクセントによって、すばらしい空間体験をすることができるのですね!!

建築:ポッサーニョ石膏陳列館

設計: カルロ・スカルパ

建築作品をみた雑誌:au カルロ・スカルパ、 au 20119月号

建築のある場所:イタリア、ポッサーニョ

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