物質試行47-金刀比羅宮緑黛殿~伝統と現代の融合、人工と自然の対峙~

金刀比羅宮(ことひらぐう)は、香川県仲多度郡琴平町の象頭山中腹にある神社です。参道の石段が、奥社まで登るとですね、な、なんと1368段もあります。その神社にあります緑黛殿は、参集殿と斎館からなる建物です。金刀比羅宮の「平成の大遷座祭」(2004年)を記念して建築され、20046月に竣工しました。「緑黛殿」という名称は、金刀比羅宮が鎮座する象頭山の青々とした山の形容と、この建物の前から望む阿讃山脈の風景を表すものとしてと命名されたのことです。ちなみに「物質試行」というのは鈴木了二の一連の作品名称で、その47番目がこの「金刀比羅宮のプロジェクト」です。「緑黛殿」と「神札授与所・社務所」がそれにあたります。今回はおもに「緑黛殿」をとりあげます。

この建築は象頭山の緑を背に受け、正面には琴平の街や周囲の山々が広がっています。そして1000年ほど前につくられた本宮をはじめとする建築と向かい合って増築されています。敷地は敷地は背面も前面も急峻な崖地で、わずかな平地には、すでに本宮をはじめ数々の古い木造建築群で占められています。この敷地では、原風景を維持し、樹木が覆う自然をこわさないことを条件に計画がされています。新しいこの2つの建築は既存建築群に沿ってわずかに残された場所に中庭を隔てて建てられています。その佇まいは既存建築に負けない存在感と美しさがあります。

まずはこれらの建築の接地のしかた、建ち方がすごいですよ!建築はそのほとんどが地下に埋められています。本宮に向けて階段を上るにしたがって現れてくる御影石が隙間なく垂直に立つ擁壁と、「船」に見立てた全溶接された厚みが1224ミリの鋼板フラットスラブと壁柱による人工大地が象徴的に表現されています。その上に作られた檜皮葺きの入母屋造りの参集殿は優雅ですねえ。

一方、中庭を隔てて山腹に埋まるように作られている斎館棟は、本瓦葺き切妻造りの屋根が力強いですね。この建築もまた地上部分の鋼板柱と鋼板フラットスラブによって支えられ、その上にしっかりとしたボリュームの木造の瓦屋根が乗っています。そのプロポーションがとても軽快で美しいです。一見すると漆喰壁の上に瓦屋根の乗った伝統的な木造建築のように見えますがそうではないんですよ。屋根の下には漆喰塗りの箱が納まっていて、これが内部空間を構成しています。地下の空間も非常に魅力的ですね。漆喰塗りの箱と箱の間は地階の採光のためのトップライトになっていて、そこを柱が貫通しています。

随所に見られる鋼板はショットブラスト加工され、茶色のさびを見せ、それがまた美しいですね。大地の一部になっているかのような表情を見せます。神聖な建築にはミスマッチと思われる鉄が使用されているのがすごいですよね。でも違和感ない。異なる種類の素材の組み合わせが絶妙です。大胆な材料の組み合わせと端正なディテールが建築をつくりあげています。まさに部分が全体であると同時に全体が部分である建築といっても過言ではないのではないでしょうか。

地下レベルとひと続きのガラスと鉄に囲まれた中庭、空間の光と闇、人工物である建築と自然、水平と垂直、これらの対比が空間に緊張感をつくりあげています。この対峙した関係性が逆に調和をつくっているんだよなあ。歴史を無視せずまた埋もれることなく、伝統的な建築技法と現代の技術が見事に融合していますね。これからもその歴史の流れをこの場所に刻んでいってほしいです。

建築:物質試行47-金刀比羅宮緑黛殿

設計:鈴木了二建築計画事務所

建築作品を見た雑誌:新建築20049月号

建築のある場所:香川県

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする