ネルソン・アトキンズ美術館増築~光が風景と呼応するアートのような建築空間~

この建築は、有名な芸術作品の収蔵から、世界的に高く評価されているネルソン・アトキンズ美術館の増築部分です。いやあ、アメリカのカンザスシティーにあるここの敷地はすばらしい庭園が広がってます。

ネルソン・アトキンズ美術館の既存部分は古典建築を踏襲した左右対称の厳格なたたずまいをしています。美術館が大規模な拡張計画に乗り出した1999年。この素晴らしい既存美術館のファサードの神聖さをおかさないような提案である必要がありました。設計コンペが行われ、選ばれたのはスティーブン・ホール案。

彼の案では、本館をよけながら丘の勾配に沿って増築部分である5つのガラスボックスが地上に不規則に配置されている提案でした。これらのガラスボックスは、敷地の丘を横断しながら、本館との景観を損なうことはありません。そのガラスの建築が点在と敷地の関係性が、建築と庭園とを融合したとても美しいランドスケープを形成しています。「ブロック・ビルディング」と名付けられたこの新たな増築部分は、既存の彫刻庭園を取り込むことで、来館者に美術館の敷地全体を体感できるような場所へと変容しています。

美術館の増築部分は南北の長い敷地の東側にある道路沿いにあります。既存美術館を横切るように芝生の東側にある緑に沿ってのびています。その緑の芝生が広がる彫刻庭園に、5つの半透明なガラスボックスが顔を出しています。それはまるで、日本庭園の庭石のごとく配置されているようにも感じます。

建築本体は地中に埋め込まれていて、その地上に見えている部分は地下ギャラリーのハイサイドライトとなっています。建築家が「レンズ」を称したこれらのガラスボックスは、昼間は地下ギャラリーへ自然光を落とす集光装置となります。導入された光はガラスを支える構造体にもなっているT字の壁のカーブにそって地下ギャラリーへ落ちていきます。また夜は内部照明による発光装置となって、彫刻庭園に点在しながら美しく光り輝いています。

このレンズはガラスのダブルスキンになっていてその空気層には、自動コントロールのソーラールーバーが設置され、自然光を制御することができます。そして夜間発光する照明が仕込まれています。彫刻庭園はギャラリーの屋根を覆うかたちでできています。ここにはレンズとレンズの間を彫刻を展示する場所を提供しながらも、芝生の屋根は、断熱性と雨水処理の役割も担っています。

変化のある地形に対し、複数のレベルによって内部空間は構成されています。レンズ1と既存棟に面した大きな長方形のエントランス広場には、水底に34個のトップライトをもつ反射プールがあります。これはウォルター・デ・マリアによる穏やかな彫刻作品「One Sun / 34 Moons」。トップライトからは、地下の駐車場に波打つ揺らいだ自然光がこぼれています。

展示スペースは、北端のレンズ1から南端のレンズ5までその地下1階レベルを南方向に傾斜しながら連続しています。その間を地表に顔を出したレンズから光がおちます。北端にあるレンズはレンズ1と呼ばれるもの、エントランス棟となっていて一番大きいガラスボックスでロビー、カフェライブラリー、ブックショップがあり、スロープを下っていくと既存棟や地下ギャラリー2に接続します。何だかレンズから降り注ぐ光とアートが呼応しながらギャラリー空間のシークエンスをつくり、来館者のアクティビティを誘発させますね。これはすごいや!光という要素が内外に関係しあいながら、風景とアートと呼応して、なんか美術館自体が光・建築・ランドスケープによるアート作品のような美術館です。なんだろう、この建築家の光のあつかい方はもう魔法のようですね!

建築:ネルソン・アトキンズ美術館増築

設計:スティーブン・ホール アーキテクツ

建築作品を見た雑誌a+u 、ルミノシティ・ポロシティ(TOTO出版)

建築がある場所:アメリカ

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