群馬県立館林美術館~建築とランドスケープが連鎖したシークエンスの創出!~

館林市郊外の水耕田跡地に建てられたこの建築は、多々良沼公園の敷地内に計画され、中心の多々良沼には毎年、白鳥が飛来します。付近には彫刻の小径と名づけられた散策路があり、公園の生活環境保全林に沿って、多くの彫刻作品が設置されています。館林美術館は自然と人との共生を表現した作品の展示・教育普及事業を行っています。そしてそれは建築と周辺の風景との関係性や空間表現にまで及んでいます。この建築とランドスケープのかかわり方がすばらしいですね。

美術館は、その芝生の広場を囲むように円弧状のガラスのギャラリーが大きく広がり、その背後に矩形の本棟が展開します。広場に植えられている常緑の芝はケンタッキーグラスで、鮮やかな緑を保っています 建築の中心には、赤褐色花崗岩を割肌仕上げで貼った曲面壁と、全面に高透過複層合わせガラスを入れた大開口から構成された半円形状の展示室1があります。ガラスのギャラリーと本棟の水平性に対して、展示室1の屋根は中央で垂れ下がった3次曲面となっています。芝生広場の緑、赤褐色の石からなる割肌の曲面からなる壁、ライトグレーの幾何学の建築本体の壁と青空の境界線、形態と色彩のコントラストと連続性が美しいです。

建物の円弧に沿って流れる水とともにエントランスへとアプローチします。広い公園をとおり、池を渡って、曲線からなる道をゆっくりと歩いていって、芝生を囲い込む建物と建物の隙間に入っていきます。このエントランスに向かって歩くと、この先に何かがあるはずだという期待感に誘われます。この建築は歩くのが楽しい美術館ですね!

エントランスホールに入ると大きな開口が外を感じさせます。水盤に浮かんでいるようですね。各展示室へつなぐ廊下は水盤を囲い込むようななだらかな曲線となっています。ガラスのギャラリーは広場の高さよりも床が掘られています。広場とは逆側に長方形の平面を持った展示室等が配置されています。円弧の内側には芝生広場に突き出た半円形状の展示室1が見え、そこには常設された展示物が陳列しています。ガラスのギャラリーからは芝生の緑が視界に飛び込んできます。空を広く見せて視線が遠くまでいくように天井の高さが抑えられ、床を低くしたことで目線が低くなり、芝生広場の緑が視界いっぱいに広がって見えます。その細長い廊下には椅子が置いてあって、広場を眺めながら休むことができます。建築と広場のこの絶妙な関係性がこの居心地のよさを生み出していますね。

芝生広場に突き出た半円形状の展示室1は大開口を通してガラス越しに、外の美しい芝生の風景を見ることができます。内部は壁と天井のカーブが、展示された彫刻作品とも絶妙の関係をもち、この空間を印象づけています。作品は見る方向によって、背景がインテリア仕上げの白になったり、また外の芝生の緑になったりします。自然光の下での作品鑑賞が、野外にいるかのようにも感じますね。ガラスのギャラリーからアクセスする、展示室2,3,4は、一般的な矩形空間の展示スペースで、絵画などの、自然光を好まない、調光を必要とする美術品の展示に使われます。展示室4は、自然光と人工照明との混合になっていて屋根にはハイサイドライトになっています。

出入口を外に出ると、煉瓦作りの別館に行くことができます。煉瓦仕上げによって芝生の緑が強調されていますね。そのフランス民家風の建物の内部には、モンパルナスにあったフランソワ・ポンポンのアトリエが、彼の使った家具などを用いて復元されています。ポンポンの作品がもつ豊かさ、愛らしさ、人間味、生命感が表現されています。晴れた青空の日には、ヨーロッパにいるような気分にさせてくれますね。

この美術館は、展示空間や移動空間をはじめ、講堂、レストランなど、どの空間も決して押し付けがましくなく、空間の質の絶妙な質の変化のコントロールが、建築の内部空間、芝生や林のなかの園路などの外部空間をつなげるアート・スペースを創出しています。この内と外、自然と人工に対する自由と抑制による空間連鎖がすばらしいシークエンスをつくっているんですよ。 丁寧に建築が配置されていて、その検討の痕跡をプランニングで感じることができます。これらを実現させるディテールもまたすばらしいですね。美術館の機能を満足させながら、公園と一体的に見せる工夫が随所に施され、この土地でなくては成立しない計画になっていますね!

建築:群馬県立館林美術館

設計: 第一工房

建築作品を見た雑誌:新建築20021月号

建築のある場所:群馬県館林市

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