森の墓地~自然に還る場所としてつくられたランドスケープ~

「森の墓地(スコーグスシュルコゴーデン)」はスウェーデンの首都ストックホルム郊外にある、国内最大規模の公営墓地です。この作品はランドスケープデザインの傑作ですね!20世紀以降の建築作品として最初に世界遺産にも登録されています。その「森の墓地」は、エリック・グンナール・アスプルンドとシーグルド・レーヴェレンツの二人の建築家によって設計されました。

1900年初頭あたりから、墓地が不足し、深刻な状況となったストックホルム。このことによって1914年に墓地の国際設計コンペが行われました。そこで勝利したのが彼らというわけです。彼らの提案は、敷地となる丘陵地と森を最大限に活用しながら、その中に建築が融合しているようなデザインでした。そこには、アスプルンドらが考える人間と自然とのふれあいが空間で表現されています。その広大な自然地形を生かした、緑あふれるランドスケープは、25年という歳月を経て1940年に完成しました。その完成からまもなく、アスプルンドは55歳の若さでなくなります。この「森の墓地」はまさに、アスプルンドらが生涯をかけてつくりあげた建築作品なんです。アスプルンド自身は、自らが設計したこの森の墓地に眠っています。

入口を抜けるとなだらかな丘の上に、花崗岩でできた十字架が見えます。この十字架は、信仰としてではなく、生命循環の象徴としてデザインされています。「人は死ぬと森に還る」という言い伝えがあるスウェーデン。自然と調和したこれらのランドスケープデザインは、スウェーデンという国の死生観が表現されています。

この十字架の近くには、「森の火葬場」と、「信仰の礼拝堂」「希望の礼拝堂」「聖十字架の礼拝堂」からなる3つの礼拝堂があります。「森の火葬場」から西へ歩くと「瞑想の丘」があります。十字架と、冥想の丘のあいだには小さな泉がありますね。冥想の丘からは、墓地のランドスケープや森が見渡せます。そこには静寂な中に、なぜか不思議とあたたかさがひそんでいるような気がします。

「森の火葬場」から林を抜けて奥へと進んでいくと、三角屋根の小さな礼拝堂が見えます。これは1920年に「森の墓地」内に最初に完成した「森の礼拝堂」です。そこから東へ歩くと、4つのピラミッドで構成されたような建物があります。これは1923年に完成した「松林のパビリオン」という管理施設で、現在は緑のビジターセンターとして利用されています。

「瞑想の丘」から「復活の礼拝堂」を結んでいるのは、「七井戸の小道」です。そこは針葉樹の原生林を切り開いてつくられた その一本道となっています。およそ888メートルあるその小道は、「復活の礼拝堂」で最後のお別れを告げ、死者を弔い、その悲しみを癒すための大切な道のりとしてデザインされています。

広大な針葉樹の森の中には、およそ10万もの墓が点在しています。そのお墓に添えられた花は地面の土に植えられ、墓石の存在が、森の中の一部として表現されているように感じます。いずれ誰もが森に還り自然の一部になると考えられているのでしょうね。自然と深く関わりを持ちながら人が静かに眠る「自然との共生」の空間はとても素敵だなとただただ感動しました。

ランドスケープ:森の墓地

デザイン:エリック・グンナール・アスプルンド、シーグルド・レーヴェレンツ

ランドスケープデザインをみた雑誌:アスプルンドの建築(TOTO出版)

ランドスケープデザインのある場所:スウェーデン

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