シアトル中央図書館~プログラムを新たに再構築することで生まれ変わった開放的な図書館~

この建築は、アメリカ西海岸のカナダと国境を接するシアトルのダウンタウンに建つ中央図書館です。人口およそ65万人のシアトル市にある図書館の数は、な、なんと28館!この数はアメリカ国内でも抜きんでているとのこと。シアトルでは1998年、「Library for All(すべての人に図書館を)」という図書館システム刷新プログラムのために多額の予算が住民投票によって確保されました。これは全米でも前例がない規模の予算で、市内の図書館はすべて新築または全面改装されました。すごくないすか!その中央図書館がこの建築というわけです。それまであった旧図書館の建て替え計画として、2000年に行われたコンペで選ばれ、オランダのレム・コールハースとシアトル出身のジョシュア・プリンス・ラマスの設計によって2004年にオープンしました。

図書館の敷地は1街区分の大きさがあります。その東西を5th Avenue4th Avenue、南北をSpring StreetMadison Streetがはしっています。海がある西側から急な坂が続いているため、4th Avenue側は1階、5th Avenue3階からアクセスできるようになっています。敷地から5分も歩けば海がありますよ。

建物の外観は、ガラスとメッシュ状の鉄から構成された多面体の結晶みたいです。ボリュームが不規則に重なっているように見えるところはだるま落としの途中のようでもありますねww。この ユニークな外観は、一般的なオフィスビルやホテルの建物などに囲まれているため、その存在は異質であり、そして非常に目立ちます。建物は、ガラスを通して外の風景と自然光を室内に取り込み、雨の多いシアトルで太陽光を最大に活かす構造となっています。最上階の11階にあるリーディングルームからはエリオット湾も眺めることができますよ!

図書館は、「パブリックライブラリーであること」に重点をおいて設計されています。図書館は、オープンでだれでも無料で利用できる建物という考えのもと空間がつくられています。1階エントランスは、大きく庇が張り出していて、出入口前はオープンスペースとなっています。3階エントランスは中に入ると大きな「living room(リビングルーム)」と呼ばれている閲覧空間があります。その空間の大きさはまるで空港のターミナルにいるようです。ガラスに覆われ、大きな開放的な空間があることでこの図書館内外の境界が曖昧になっているように感じます。特に「living room(リビングルーム)」の空間が図書館の中心となって、空間を介して少しずつ図書館の内部に入って行く感じがしますね。そしてこの大空間がいろいろな活動を許容しているような気がします。全面ガラスからできた建物なので、その光が落ちるひだまりが気持ちいいです。 ガラス張りのため外の気配を常に感じることができます。視線の抜けが多く、1階は天井が開放されているため、何かが行われていることがいろんな位置から感じることが出来ます。

この図書館の蔵書収蔵能力は145万冊もあります。しかしながら閉架書庫が無く、どの本にもアクセスできるようになっています。6~9階の4層からなる「spiral」と名付けられた書架スペースには、ゆるやかなスロープでらせん状につながりながら全蔵書のおよそ75%が配架されています。また他にも館内には利用者用のコンピュータが400台設置され,50種以上のデータベース等が利用できるほか,無線LANにより,利用者は自らのPCを使用して,館内のどこからでもインターネットにアクセスできます。本を探すにしても、ゆっくり読書を楽しむにしても、リラックスのできる素晴らしい図書館の環境になっています。

これらの新たな図書館環境が生まれたのは、これからの図書館のプログラムを再構築し、そしてそれらを空間化したことによることが大きいです。設計者は、それまでの利用状況や、これからの蔵書の増加、利用者や管理者の使い方を整理、分析し、図書館という施設のプログラムを新しく提案し、とらえなおしています。それらは断面的な視点から明快に9つの場で空間を構成しています。

その9つの場とは、①地下の「parking(パーキング)」、②1階の「kids(こどもスペース)」、③2階の「staff(スタッフスペース)」、④3階の「living room(リビングルームと呼ばれた閲覧スペース)」、⑤4階の「meeting(ミーティングスペース)」、⑥5階の「mixing chamber(レファレンススペース)」、⑦6~9階の「spiral(書架スペース)」、⑧10階の「reading room(ソファやデスクがある学習スペース)」、⑨11階の「head quarter(管理スペース本部機能)」になります。

②「kids」④「living room」⑥「mixing chamber」⑧「reading room」は、流動的な場として、時代の変化に伴って利用の仕方が変わる開放的な空間となっています。

①「parking」③「staff」⑤「meeting」⑦「spiral」⑨「head quarter」は、機能的な場として、時代が変わっても利用の仕方は基本的に変わらないものとして固定された空間となっています。

定義されたこれらの空間は、垂直方向に交互に積み上げられながら、ガラスのスキンによって覆い、空間的に関連し合っています。この建築はまるでプログラムをそのまま建築化したようなかたちになっているんですね。デジタル化の進む現代では、図書館の役割もこれからどう変わっていくのか予測がつきません。メディアの形態もどんどん変化してゆくはずです。そういうときが訪れた場合に、想定していた機能が互いに侵し合うのを防ごうという考え方でこの建築がつくられているんです。より複雑になっていくであろう情報社会に対して、この図書館建築は新たにソフトとハードを融合しながら勝負を挑んでいるんですよ!その新しい建築のチャレンジが成功しているのか、この図書館に訪れる人が減るという事がないようですね。利用してみたいな!!

建築:シアトル中央図書館

設計:OMA

建築作品をみた雑誌:a+u OMAa+u 20051月号、GA03 LIBRARY

建築のある場所:アメリカ、シアトル

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