豊島美術館~水滴のような環境体としての建築~

豊島(てしま)美術館は、瀬戸内海の豊島(香川県土庄町)にある美術館です。瀬戸内海島々を舞台に開催された瀬戸内国際芸術祭のタイミングで201010月に開館しました。豊島はその名おり、自然豊かですしかしながら一方で、産業廃棄物の不法投棄が全国的に問題となって注目された場所でもあります私がはじめてこの島のことを知ったのは後者の話題からでしたね。その後、島の浄化が進み、この美術館が建てられることとなりました

そんな豊島の小高い丘に建設されたこの建築。敷地は休耕田となっていた棚田を地元住民とともに再生した場所となっています。そこに建つ建築、上空から見たその形状は水滴をモチーフにしたものとなっています。建築家は、この作品は洞窟や丘のようなイメージで、土木と建築の中間を目指し、そして環境との一体化をはかったとのこと

建物内部にはアーティスト内藤礼による「母型」という作品が展示されています。建築と一体となった作品で、周囲の環境や時間の経過により変化をしていくような作品となっていますコンクリート撥水剤を塗布したわずかな勾配のある床の上を、水滴が生き物のように動いていますね。個人の1作品だけを展示する美術館なんてとても珍しいですよねプロジェクトはそれもあって、建築の設計とアートの創作を同時に進めていったとのことです。環境だけでなくアートとの一体化もこの建築に求められた大きな要素だったわけですね

建物の広さはおよそ40×60メートル、最高高さ4.5メートル。こ広さのわりに背の低いコンクリート・シェル構造の建物には柱が1本も存在しい無柱空間となっています。そして天井に2箇所の開口部が開いていて、そこから周囲の風、音、光内部に直接取り込んできます。もうこれは開口ではなくて穴ですね。ガラスがはめ込まれているわけではなく、外側と内側が直接つながっています。豊島の豊かな自然環境が空間に流れ込んできます。何かむかしの建築の本来の姿に近い気がしますよね。

このコンクリートシェル構造の建物。建築そのものは、コンクリート打ち放しに撥水処理をしただけのシンプルなつくりです。しかしながら、直線のない水滴のような建築の実現に向けては、解決すべき課題はとても多かったようです。まずこの形態。コンピューターを使った高度な解析計算によって可能なものとなっています。これが実現できたのは、構造設計者の先進的な設計アプローチによるものそして何よりこれを実現しようという、勇気でしょうね!施工については曲線を表現する必要があったため、自由な形をそのまま出すことができるコンクリートが最適でした。しかし通常のコンクリート型枠では曲面がうまく表現できない。そのため、コンクリート打設は、前例のない方法で行われました3次元曲面の屋根を継ぎ目なく、安価に打設するため、盛り土を型枠にしたんですよ。土で型枠をつくり、その上に配筋してからコンクリートを打設し中から土をかき出して空間をつくったわけです。施工時には、盛り土型枠を傷つけないように慎重な作業が求められましたたいへんだったろうなあ。完成したその仕上げの素晴らしさに建築家は驚かざるを得なかったとのことですいやあ、すばらしいですね。感動します!

建築はそもそも自然環境のから人工的な環境を切り取ってつくられるものです。でもこの建築はその人工環境の中に、アートの表現によって新し自然環境が入り込んでくる不思議な循環が生まれていますいままで経験してきた建築とはあきらかに異なり、その空間体験には圧倒的されました!企画したクライアント、空間を設計した建築家、その空間に呼応する作品を生み出したアーティストそれらを実現する技術空間の中で交わり、この建築を生み出したといえます!この建築の存在が、によって破壊されかけていた島の環境、もともと生きてきた環境に戻していき、再生への未来へとつながっていく感じがしました

建築:豊島美術館

設計:西沢立衛建築設計事務所

建築作品をみた雑誌:新建築20111

建築のある場所:豊島(香川県土庄町)

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