カップマルタンの休暇小屋~巨匠が追求した最小限住宅~

フランスのニースから列車に乗って、地中海を眺めながらモナコを通り過ぎ、そしてトンネルを抜けるとカップ・マルタン・ロックブルニュ駅に着きますそして駅からプロムナード「ル・コルビュジェ」を歩くと15分ほどでこの小さな建築にたどりつくことができます。この建築は、あの巨匠建築家ル・コルビュジェが夏に訪れていた丸太小屋です。 この小さくてかわいらしい丸太小屋は、木に囲まれ、美しい地中海の海岸線の景色に気を取られているとつい見過ごしてしまうように存在しています。

何も知らずにぱっとこの丸太小屋を見て、とても建築の巨匠が作って最後に住んだ住宅とはわからないでしょう1952年に完成したこの休暇小屋は、平面3660×3660ミリメートルのな、え~と、日本の間で言うところのだいたい8帖くらいの大きさですかね。そのなか必需品や造作家具を設けた最低限の空間だけが存在しています。この小屋はコルビュジェ夫人のために作られたそうですが、コルビュジェにとって最小限の住宅における快適性の追求は生涯にわたってのテーマだったようです。そのなかで、コルビュジェはいかに快適に暮らせるかを試していたのでしょうね。この小屋への思い入れはそうとうなものだったらしく、パリの事務所で5人のスタッフが関わりながら半年かけて計画されたそうです。

この小屋は、コルビュジェが考案したモデュロールという人体寸法、そして黄金比の基本寸法をもとに設計されています。具体的には、平面を700×3660ミリメートルのアクセス空間と3660×3660ミリメートルの正方形の居住空間に分割し、次に居住空間を2260×1400ミリメートル4つの長方形と860×860ミリメートルの正方形に細分化しています。それぞれのスペースに個別の機能を与えながら、駅からのアクセスもふくめ、黄金比の螺旋状空間に沿って小屋中央にアプローチするように設計されています

窓、家具、設備などの位置は全て行動範囲を基準として決められています。天井からは、まばゆいほどの光が室内に入ってきます。壁は板張りの仕上げ材をグリット割りした格子の額縁となっていて空間のアクセントになっています。ベッドの下には収納が設けられていますね。壁の一部が緑色に塗装されたトイレはカーテンが間仕切りとなっています建物の東側にある壁にはサニタリーのコア柱があり、南向きに洗面ボールが設けられています。東側窓の窓枠にはフレスコ画が納められていて、戸を開くと仕事部屋と地中海の風景を取り込むピクチャーウインドウになっています。横長の窓が配置されている場所には、サイドテーブルの大きさと高さに合わせて置かれています。開口部から家具まですべてそれは建築のスケールとして扱われていますコルビュジェ亡くなるその日までこの建築に住んでいました。生涯かけて追求した住宅が、コルビュジェにとっての終の棲家となったわけなんですね。

建築:カップマルタンの休暇小屋

設計:ル・コルビュジェ

建築作品をみた雑誌等:「ル・コルビュジェ/カップ・マルタンの休暇」(著:ブルノ・カンブレト監修中村好文TOTO出版

建築のある場所:カップ・マルタン

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