トレド美術館ガラスセンター~ガラス素材の追求により発見したシャボン玉建築~

この建築は、アメリカオハイオ州のトレドというまちにある美術館別館です。トレドはもともとはガラス建材の工場で有名になったところ、そのトレド美術館は、ガラスアート、ガラス工芸のコレクションで有名な美術館です。そんなこの別館は、ガラス工芸を中心とした展示のための小さな美術館です。 別館は2つ目。ちなみに1つ目の増築はフランク・Oゲーリーが手がけていて、メインの美術館の隣にあります。敷地には樹齢およそ150ほどになる美しい木が立ち並んでいて、その周辺には静かな住宅街がひろがっています。

この建物の機能は大きくわけると、ホットショップというガラスをつくるための工房、ガラスを展示するギャラリー、講義パーティーができる多目的室の3つがありそれらの活動それぞれが互いに見えるようにしたいという要望施主側からあったそうです。そこで建築家が提案したものは、ひとつひとつの部屋がその機能ごとにシャボン玉みたいなカーブを一筆描きで描きながら、ガラスによってくるりと囲まれるというアイディアです。このコンセプトモデルをはじめてみたときは面白そうでどきどきしましたね~。各部屋がおのおのガラス壁をもつわけです。それぞれの部屋がカーブガラスでつくられて、それが独立してあって、でも一方で視線が抜けて、互いの状況を楽しめるようになっています。

外観は高くのびた樹木の美しい枝振りを尊重しながらため、建物を低く水平におさえています。そして全体的にその素材に透明ガラスを使っています。トレドはさすがガラスで有名になった街だけあって、ガラス製品やガラス建材をつくる工場がいくつもあり、ガラスを安く提供してもらえることから、建築家はガラスを多用した決め手となったようです。カーブを描いたガラスの壁面は、いろいろな角度による反射が起きて、周辺の建物や緑、そして内部の風景を建築に映りこませています。その様相が内と外が混ざり合うような風景をつくりあげています。そして透明度の高いガラスにより、その空間はかなり先まで透けて見えます。それが何層にも重なってうつりこんで、透明なのか不透明なのかよくわからないような曖昧な空間ができています。内部で動くと、それにともなってうつり方がかわっていくので、風景そのものが自分にずっとついてくるような気がします。 不思議ですね~。また美術館はバックヤード部分は地下に入れることで地上をすべて開放的にした空間となっていて、表の美術館側と裏にある住宅地側それぞれからアプローチできるようになっています。そしてそれぞれのエントランスをガラスのカーブによって流動的につないで連続させています。

ホットショップは炉があって、原料を溶かしてガラスをフーッと吹いてつくっていく過程を見ることができます。一部屋は展示室側に向、もう一部屋は通り側に向き、ガラスによってグルッと囲まれています。カフェもグルッと囲まれていますカフェで座りながらホットショップの実演も見ることができます。何か得した気分ですね~。またガラス工芸作品も壁がガラスで透明であるので四周から観ることができます。ガラスの壁もショーケースになっている感じがおもしろいですね。パーティやレクチャーや展覧会に使ったりする寄り合い場でもある多目的室では、ぐるりとカーブしたガラスで囲まれたワンルーム空間となっています。ギャラリーや工房をパーティーにきた人に作品をてもらいたいという要望から、機能や動線をこれまたつなぎ合わせてカーブしたガラスでくるんでいます

ということで、このガラスで囲まれた空間が集合するということは、壁が二重になります。つまりガラスとガラスの間は空洞となります。それを空調のバッファーゾーンとして使っています。なるほど~。ホットショップは炉があってすごく暑い空間である一方、ホワイエは普通の温度湿度、展示室は温度湿度の要求条件が非常に厳しい室内条件となっています。小さい建物の中にいろいろな異なる室内環境を求められたということがあって、間にこういう空気ゾーンをめぐらせているという理由もあるのですね。外側も同様にダブルファサードになっていて空気ゾーンがグルっとまわっています。空気ゾーンをバッファーゾーンとして設けることで熱を遮断しています。ガラスという素材を意匠、そして環境レベルまで追求した空間がシャボン玉が重なり合ったような不思議な風景を生み出している。これって面白いですよね。材料自体の新しさではなくて、材料の見方を発見した表現になっているような気がしました!

建築:トレド美術館ガラスセンター

設計:SANNA

建築作品をみた雑誌:新建築200610月号

建築のある場所:アメリカ、トレド

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