マールバッハ近代文学博物館 ~敷地と建築と歴史の記憶との調和からの建築~

シュトゥットガルト郊外、ネッカル川の谷を見渡せる岩台地。そ台地のにあるマールバッハの観光公園には近代文学博物館、シラー国立博物館、ドイツ文学史料館と、文学に関する施設が3箇所ほどあります。その中で今回ご紹介する建築は近代文学博物館。英国人建築家デイヴィッド・チッパーフィールドの設計によるものです。

都市の歴史や土地の記憶をよみとき、その場にふさわしい建築をつくりあげることを大切にしているチッパーフィールド。この建築も古典建築の抽象的な要素と現代建築における概念の明快さからなる要素を調和させ、その場所の雰囲気を継承しながら、静かな建築をつくりあげています

建物の入口がある正面は、ギリシアの神殿が現代的な抽象性というんですかね、コンクリート打ち放しのモダン洗練性があるファサードデザインになっています。そんな抑制されたデザインからなる建物のアプローチは、美しが並列している回廊を通りながら、そのレベルは敷地のなかに掘り込まれ、しずんでいきます。建物の入口部分が最も高い地点にあるわけです。鑑賞者はその回廊、ロビー、階段スペースを通って下に下りていくと、博物館の内部空間は現れます。建物は地形に埋められながらも下りていくと、その視点が反対に上昇して、開いていき、不思議な感覚をおぼえますこれは敷地の急な傾斜を用いて、テラスが異なる地面で接する空間づくりを考慮しているからですね。敷地の特性を空間表現に巧みに用いています。

内部空間に入ると、黒っぽい伝統的木材よるパネル展示が印象的な展示ギャラリーへとたどりつきます。展示ギャラリーは、横から照明が当てられたガラスの棚が広いスペースに陳列された空間となっています。ガラスに乱反射した照明が、展示空間を幻想的に演出しています。この棚には、ドイツ文豪たちの直筆原稿などが展示されています。草稿はもちろん、プライベートの手紙や写真などなど。余計な説明文は一切なく、それぞれの資料には文豪の名前だけが記されています。カフカ、トーマス・マン、ヘルマン・ヘッセなどなど。展示されている作品原稿は敏感で繊細なものであるため、人工照明のみで照らされ、展示環境制御されています。またこれらの空間は自然光のギャラリーに接していて、そこからは観光公園の緑、そして谷がガラス開口の向こう側にながめることができ、展示ギャラリーの落ち着い内在化された世界とは対比した空間のバランスが絶妙です!

建築を構成する素材は、博物館があるネッカル川の谷の歴史を尊重したものとなっています。この台地を構成しているい素材感の特徴を空間に落とし込み、博物館が置かれている自然環境を建築による人工的環境によって空間表現しています。それは美しいコンクリートだけでない、砂を吹きつけた石と石灰岩によるものでこの地域の豊かさを表現しているのであろうと思いますこれら冷たい素材感と、柔らかくそして暖かい素材感による壁が、建物内部を空間に抑揚を与えながら空間を構成しています。建物の内外で使用される素材のバランスがいいですねそこには明快かつ合理的な空間構成でありながらも、穏やかな雰囲気をもっています。重厚感と軽やかさが上手く調和しているというんでしょうか。とても落ち着いた大人な建築です。ミニマムにまとまった建築なのに、その空間に感じるスケール感みたいなものがいいんですよ。これが建築家が目指した周辺環境と建築、展示と建築、そして街の歴史と新しい建築との関係性の構築なのでしょうね!

建築:マールバッハ近代文学博物館

設計:デイヴィッド・チッパーフィールド

建築作品をみた雑誌:a+u20069月号

建築のある場所:ドイツ

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする