阿佐ヶ谷南の家~小さく美しいコミュニティを生む高齢者住宅~

この住宅は70代老夫婦のための高齢者住宅であり、高齢者として都市に住み続けることを目的とした住宅です。敷地は青梅街道に面し、JR阿佐ヶ谷駅から商店街を抜けた場所にあります。この間口およそ5メートル程・奥行き18メートル程の敷地に、施主の要望を地上3階+ロフトとして計画しています。

建築家はこの住宅で都市における、高齢者住宅のあり方を考え提案しています。都市住宅は都市からの刺激と影響を受けながらも、その住宅内部には住み手が心落ち着くプライベートな空間をつくりあげる。それが都市に生活するうえで生活をより豊かにすると考えたわけですね。まずその提案としては、1つは都市のにぎわいを住空間の中に誘い込む装置をつくり、そしてもう1つは住居の奥まった場所に施主が静かに居ることのできる空間をつくっています。これら2つの空間は、3層分を貫く階段によって密接につながっています。

前面道路から細いスリットを通り抜けて玄関に入ると、玄関にはエントランスギャラリーが設けられ、青梅街道の都市的なスケールから、住宅的なスケールへと変換するための装置になります。そして空間内に登場するのは、およそ5メートルの吹抜空間。そこからゆったりとした階段で上った3階には2層分の吹抜空間があります。その空間は7枚のコンクリート壁によって構成されていて、壁と壁の隙間がスリット窓となって内部空間に光と風を導きます。この窓によってそれぞれの空間に変化が生まれていますね。

1階には現在も執筆活動のお仕事を続けている夫妻のおよそ20000冊にも及ぶ蔵書を収納する書庫と書斎があります。ここは夫妻にとっての仕事場となります。2階には主要な生活空間があり、その中でファミリールームと呼ばれる夫妻のためのプライベートな空間がひっそりと家の奥にあります。そして3階はお客さんを招き入れるための空間があります。長期滞在できるゲストルームもついています。3階に主要な空間が配されているため、この小さな規模ながらも地上3階建+ロフトの住宅は、エレベーターの設置はもちろん、施主である高齢のご夫婦に配慮された、バリアフリーに対する様々な工夫がなされています。住宅の中央を縦に貫く、打ち放しコンクリートとプロフィリットガラスによるシャフトは、エレベーターの用途以外に、自然換気のシャフトとしても機能しています。そして上部をトップライトとすることで自然光で暖められた空気が対流し、階下の空気を外部に放出します。天空から落ちる光は3階のみならず2階にまでも届けられて、光でこの住宅空間が構成されています!

都市にあり、いつでも人が気軽に遊びに来られる住宅。住宅であるようでそれは小さな公共の建築のようにも感じます。それが都市に生活する空間としての小さなコミュニティをつくりあげているのですね。都市に生活するってこういうことなのかなあ。

建築:阿佐ヶ谷南の家

設計:小川広次建築設計事務所

建築作品をみた雑誌:新建築住宅特集200511月号

建築のある場所:東京都

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