サン・クリストバルの厩舎~風土の色彩で構成されたランドスケープ・アーキテクチュア~

メキシコで最も有名な建築家ルイス・バラガン。彼の建築メキシコの強い太陽の光そして乾燥した大地青い空、そこに映える原色の壁の構成がかなりのいきおいで魅力的です

そのなかでこの「サン・クリストバルの厩舎」という建築は、メキシコ・シティの郊外にある、クライアントの自邸と馬の厩舎です。まさに馬が美しく見えるための建築。青い空を背景に、水を噴出する赤やピンクの壁が抽象的な空間を構成しています。その一角には馬専用のプールがあり、その抽象的な空間の中に馬がたたずむ光景がこれまたとても美しいです。馬に親しんで育ってきた馬好きなバラガンにとって、このプロジェクトは、ぜひとも実現したかったものであったでしょうね。そこは人間と馬のための空間がつくられています

建物の敷地へと入る門の扉を開けるとそこには外界から隔絶されたなんとも静穏な空間が奥へと広がっています。左手前には施主であるエゲルシュトーム氏の白い住宅があります。エントランスを通った来訪者には、赤い壁とピンクの壁の間から、木々の緑や水面の一部がチラっと見えるだけで、馬がいる大きな庭は隠れて見えません。じらすわあ。壁と壁との間や開口から隠れ見える気配が期待をふくらませます。そして視線の先にある手前から白、赤、さらにピンクの壁が、重なり合いながら美しく配置されています。その間からは水や木がほんの少し見ます。いやあ、何でこんな原色で構成された空間なのに下品に見えず、逆に美しいのだろう。

赤い壁の場所まで歩いていくと、その目の前には水が地面と同じレベルで張られ四角いプールが広がっています。さらにプールに沿って歩いていくと、水平に伸びるピンクの壁、真ん中に配置された樹さらにその奥にはスリットの入ったピンクの高い壁があります。馬のいる厩舎へたどり着くと、エントランスから見えた赤い壁は二重になっていて、の間を流れる水がしぶきを立てながらプールに流れ込んでいます。ここでは馬が数頭飼われていて、とても丁寧にケアされていました。どの馬もぴかぴかに磨かれていて、気品あるわあ

赤い壁と直角に対向するピンクの壁、この開口部分は馬に乗って通り抜ける高さに設定されていて、プロポーション、スケールとともに馬が最も美しく見えるようにつくられています。馬がこのピンクの壁の前を通る瞬間、それはそれは美しい光景です。このピンクの壁は以前マヨネーズのCMで使われていましたね

バラガンの建築によく使われる赤やピンクは、メキシコの伝統的民家などにもみられます。そしてまたこの赤やピンクは、ブーゲンビリヤの色。メキシコの街には、赤やピンクのブーゲンビリヤがあちこちに咲ています。また、扉の薄紫は、ジャカランダという花の色、赤褐色はメキシコ特有の土の色、という具合に、バラガンが使う全ての色はメキシコの風土に関係していることがわかりました。だから、かわいた青い空の色や植物の緑にもとてもあっていてぱっと派手な色でも、違和感を感じないのはそのせいなんですね。バラガンはメキシコ風土色を利用しつつ、一面の壁をスクリーンのようにつかっています。そこに映りこむ木々の影、壁の上には青い空に白い雲。そこに馬が現れる本当に美しい情景です。これはランドスケープ的な作品でもありますよね。

建築:サン・クリストバルの厩舎

設計:ルイス・バラガン

建築作品を見た雑誌等: ルイス・バラガンの建築(TOTO出版、著:斎藤裕)、カーサ・バラガン(TOTO出版、著:斎藤裕)

建築のある場所:メキシコ

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