上州富岡駅~観光客を招き、地域の核となる駅舎~

上州富岡駅は、世界遺産に登録された富岡製糸場の玄関となる地方私鉄の駅です。富岡製糸場といえば歴史の教科書にもでてきたあれですね~。その富岡製糸場の最寄り駅としてこの建築は建て替えられました。

建築家は富岡製糸場を核とした観光拠点、そして富岡の新しい集いの拠点にもなるような駅舎にしたいと考えました。そこで富岡の象徴でもある製糸場の建物から、西洋建築の持つ重厚さと日本建築の繊細さを融合させた新しい駅舎を提案しました。

そんなこの建築、長さ90メートル、幅10.4メートル、天井高6.5メートルの白い浮いた板のような大屋根が細い柱で高く持ち上げられています。遠くから建物を見ると、屋根の下の隙間から周囲の風景が見えるようになっています。とても軽やかな駅舎が形成されていますね。そしてまたその下に展開するレンガで形成された場が駅舎を特徴づけていますね。レンガ素材の古き良きを思い起こさせながらも、レゴブロックで構成されているかのような土台や家具の構成がおもしろいです!駅周辺の床までそのテイストが連続していて、鉄道と街が一続きとなっています。プラットフォームは、富岡のまちの門みたいな存在となっていますね。夜は屋根が照明の反射板として、大きな間接照明器具みたいになるというのも魅力的です!屋根の下にはまちのスケールにおとしこんだ待合室やコンコース、情報コーナー等が点在して、それが縁側のような快適な居場所をつくりあげていて、市民の交流スペースとして開放的な半外部空間を生み出しています。

建物の構造で建築家は「鉄骨レンガ積み造」という構造形式を提案しました。これは軽やかな鉄骨と重みのあるレンガが一体となった新しい構造です。富岡製糸場がレンガ造と木造が組み合わされた重厚感ある建物であるのに対し、駅舎は鉄骨造とレンガ造を組み合わせた軽やかな空間をつくりあげています。一見バス停みたいな感じですよね。鉄骨格子張りの屋根が細い柱によって支えられ、柱と地面をこれもまた細いブレースでつなぎます。そしてレンガを積んで壁などを覆うようにしています。レンガは耐震性だけでなく耐火や防水などの保護材としての役割も果たしています。

そしてそのレンガの壁は、長手と短手を交互に積み上げていくフランス積みというやりかたを採用しています。そこからベンチなどのファーニチャーが形成され、人々が寄り添う場がつくられているのがとてもいいなと思いました。またレンガには断熱性もあり、さらに保温性もあるとのことで冬は暖かくて夏は涼しい。確かに蓄熱暖房でレンガが使用されているのを見たことがあります。さらにレンガには保水性もあり、舗装材への使用でヒートアイランドの抑制につながる環境にやさしい駅舎にもなっているとのこと。

そしてここもがんばっています。通常、線路とホームは、その両側を分断しまいがちですが、その上空高くにプラットフォームがあることで、その下に視線と空気が流れ、両側の町を視覚的に分断すること無く、逆に結びつける効果を生んでいます。さらに駅前広場から駅舎の待合室や改札口までを同一のレベルに設定するというアイデアによって、駅はまちにより強く開かれた駅舎になっています。そしてさらにレンガの使用によって、さらに周辺の歩道や隣接する広場にもおよび、駅前広場と一体となった都市的空間を市民に提供しています。おそらくこれは、建築家と行政とがコミュニケーションを重ねながら、駅とその広場がまちの景観としてどうなっていったらよいかというビジョンをきちんと考えた結果であると考えます。その実現には民間や行政の垣根を越え、その調整に設計者の多大な努力費やしたことでしょう。その苦労がこの設計にもみてとれますね!

そしてその努力が日常的に使用される駅舎としての役割と世界遺産に登録された富岡製糸場の玄関口としての役割とを併せ持つことに成功しています。この建築がまちのシンボルとして、観光客が集い、親しみとにぎわいあるまちとしてのの発展を願っています!

建築:上州富岡駅

設計:TNA

建築作品をみた雑誌:新建築20145月号

建築のある場所:群馬県富岡市

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