カステル・ヴェッキオ美術館~歴史的建築物への敬意とデザインの融合~

カルロ・スカルパにより古城を改修した美術館がある、あの「ロミオとジュリエット」で有名なイタリアのヴェローナ。そのヴェローナのまちは中世の面影を残す北イタリアの古都です。ここいい街ですよね~。旧市街は、アディジェ川と城壁とに囲まれた城塞都市でした。その北端のアディジェ川の要塞だった所にそのカステル・ヴェッキオ美術館があります。カステル英語で言うところのキャッスル、つまり城を意味し、ヴェッキオが古いという意味、つまりカステルヴェッキオ美術館はその名の通り、古城美術館を意味するようです。この建物は、1376年に築城されたゴシック様式の古城でした。荒廃していたこの場所は、その後市立美術館に改修されたわけですそして1964年のスカルパによる改修は、古城を繊細で密度の高いデザインの建築に変貌させたわけですその後も、彼は1973年まで数回にわたって改修を加えています。これは既存改修建築の傑作ですね!まさに既存のものを活かし、新しい空間を作り上げた最高の例です!!元祖リノベーションって感じかな。

建物は、ロの字の建物が中庭を囲む構成となっています。道路から堀を越える橋を渡って、門をくぐって中庭に出ると正面に美術館が見えます。エントランス入ると彫像ギャラリーがみえてきます。彫像ギャラリーは、正方形平面となった展示室の5室が、東西直線状に細長く連なっています。かつては中央に玄関が配置されていたようで玄関を中心として、その両に対称的に3室を並べた構成となっていました。スカルパは改修にあたって、玄関を東端の1室に設けて動線を構成し西側の城塞部分に連結していた1室を屋根と壁の一部を切り取って、ギャラリーに連絡する屋外通路に改修しました。

彫像ギャラリーは、入ると出口部分まで見通すことができます。その奥行きを感じる透視図的な光景は、人を静かに奥へ奥へと誘い込んいきますねおよそメートル四方の5の展示室は、半円状となったアーチの開口がある分厚い壁で空間を節しながら連結しています。アーチが一直線に並ぶ光景は、とても強い空間軸を感じさせらがら軽快にその空間同士連続しています。5の展示室は形状はほぼ同じくらいですが、それぞれに窓の形状と位置、そして展示が異なるので、光の量と質が微妙に室内の印象を分け、空間の個性をつくっています。

彫像ギャラリーは、展示作品を見ながら真っすぐ歩いていけば、ほんの数分で通り抜けてしまう小さな空間です。そんな空間に展示されている彫刻作品は、なぜかそれぞれがバラバラな向きに置かれています。普通だったら出入口軸を中心に正対するように展示されるはずですが、その点在された彫刻あちこち向いていますそれが動線を空間軸に絡まるよう構成となり、美術館の動線計画に組み込まれているんですよ!前室で見た彫像がこちらを向いていて、なんか空間を振り返りたくなったりしますね。中庭側に設けられた窓からの光が彫刻を照らし、陰影を作り出しています。 寄り道するように彫像を鑑賞しながら、その空間の光の変化を彫像とともに感じる空間がすばらしいです!展示作品をいかに見せるか、どこにどうやって置くかがしっかり吟味されているのだなと感じました。11つどの展示作品を見ても、あたかも最初から、城であったときから、そこにそうしてあったかのような錯覚に陥ります。でもそれは古い物・古い文化を残しつつ、新しい空間に仕立て上げられているんですよ。過去の変わらない空間と彫像、現在の変わり続ける時間と光の中、動き鑑賞する人。このギャラリーはそれらの対比をも美しくさせているようです。それらは立ち止まったり振りかえったりしながら進んでいくように計画されているんですね

彫像ギャラリーを出ると屋外の通路空間に出ますそこは動線が交差する場となっています。 展示空間を行き来するたび、この空間を通り、いろいろな角度から騎士の彫刻や空間を見ることができ、その構成は立体的で複雑でこの屋外通路の空間の、粗く切断したような表現は建物が無造作に切断されているような印象があります。その粗く見えるデザインは、ギャラリーが無限に続く空間であったかのようですその屋外通路の2階レベルには、14世紀中期のヴェローナを統治した貴族カングランデ2世の騎馬像が展示してあります。中空に浮かんでいるような設置は、一見何だかあぶなっかしいですね~。でも石の彫刻作品をこんな風に半屋外のしかも中空に展示するなんて、遊び心がおもしろいです!その彫像の存在がこの空間をより立体的に表現しているものになっているような気がします。その空間は、彫像だけを観る空間ではなく、光と時間と人のアクティビティを感じる場となっているような気がしました

スカルパは既存の建築を残して、これに斬新なデザインを加えて、まったく新しい空間を造形しました。外観、アプローチなど歴史遺産としての姿を壊さずモダンなデザインを組み合わせて機能性と遊びを持たせているのはさすがですね!ベースとなっている既存空間完全になじんでいます。既存部と新たに付加した部分のバランスが巧妙で違和感がありません。建築家の古い建築に対する敬意と歴史を継承する意思がその表現にあらわれています。ういう緊張が、材料やディテールに宿っていますよ!

建築:カステルヴェッキオ美術館

設計: カルロ・スカルパ

建築作品をみた雑誌:au カルロ・スカルパ、 au 20119月号

建築のある場所:イタリア、ヴェローナ

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