ピューリッツァー美術館~美術作品に純粋な敬意を表した美術館~

この建築は、ピューリッツァー賞創設者家族のコレクションを収蔵する美術館です。敷地はアメリカのセント ルイスにあるワシントン通りに面しています。セントルイスの中心部は長年の郊外開発によって、まちが衰退の一路をたどりつつありました。そこでこの美術館のクライアントであるピューリッツァー氏が、新たな再開発計画が進められていた文化地区に対して文化的な拠点をつくることができればと考えたとのことです。すばらしいことですね!

建築は、建築家が意図として進めてきた住宅スケールをもったギャラリーとして、とてもシンプルで明快な空間構成となっています。その空間プロポーションの検討が内部空間に絶妙な緊張感を生み出しているような気がします。

ピューリツァー美術館の常設展示は小規模な空間からなっています。建築は2つの長い直方体ボリュームを並行に挟んで水庭が配置されています。この静寂な空間は時間を忘れさせてくれますね。そしてそれぞれのボリュームには異なる高さが設定されていて、高いほうがメインギャラリーとなっています。ガラスとコンクリートに包まれた、静かな空間に入ると、メインギャラリーの南壁で、エルスワース・ケリーの傑作絵画「ブルー ブラック」が大きな存在感を放っています。低いボリュームのほうにはエントランスホール、ライブラリー、事務や研究関連諸室が入っています。エントランスと2つのボリューム空間を結ぶ空間には深い庇をかけラウンジとしていて、屋上には緑の庭を配置しています。美術館の外部空間に展示されている赤い鋼製の彫像はリチャード・セラの作品「ジョー」、カーブを描いた壁の隙間を奥にたどっていくと、らせんを描きながら中心に向かって進み、見上げるとそこには空が!

外部空間が内部のすべてのギャラリーと開口部を介して連続しています。その絶妙な位置関係に配された開口部は、現代美術の空間を光で演出し、そして内外空間のすばらしい関係性をつくりあげています。内部にとりいれられる光は時間や季節のうつりかわりをうつし、シンプルな空間のなかに自然要素からなる表情を与えています。

かなり純粋な空間になっていて美術作品がはえていいなあ。このくらいシンプルな構成だと、安藤建築はよりそのすばらしさがより際立つような気がしますね!しかも展示作品には壁面に銘や説明がいっさい掲示されていません。すべて鑑賞者の想像力にまかせられています。すっきりとしたコンクリートやガラスの使用によって極限までに装飾が抑えられた空間には、そこに展示される現代美術に対する敬意がこめられているような気がします。

この計画では、初期段階から、作品をおさめるアーティストとの意見を交換しながら進めていったとのこと。これはなかなか難しい作業であったとは思いますが、そのプロセスを経てこのすばらしい空間が完成したことで、よりこの美術館としての意義を高め、美術を展示する空間としてのすばらしい説得力を獲得できたのではないかと感じます。

建築:ピューリッツァー美術館

設計:安藤忠雄建築研究所

建築作品を見た雑誌:a+u 20023月号

建築がある場所:アメリカ、セントルイス

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