Pit house~敷地環境を受け入れる家~

この住宅建築は瀬戸内海の山の斜面を宅地造成したひな壇状の敷地にあります。北向きに眺望が開いていて、道路面からはおよそ1mほど高低差があります。ぱっと外観を見ると、シンプルな箱の建築に見えますね。でもその内部は、そこからは想像もできない円形状の空間がひろがっています。

建築家は、この段上になった地面、それらを取り囲んでいる近隣の塀、そして斜面に沿いの住宅群、または遠くの山並みの風景など、その敷地にある外部環境をそのまま受け入れながら住まうことができる住宅を考えたとのこと。でも一般的には、敷地と建築が連続しているというイメージは、例えば、内部空間があって、テラスデッキがあって、そして土のある地面につながる。その内部空間とテラスは窓によってつながっている。そんな感じではないでしょうか。この住宅はそんなものではありません。もっと、こう突き抜けた関係を模索しています。

建築に入るとその空間は、敷地の自然環境と建築が同時に存在するような関係性を感じずにはいられません。具体的にはどんな感じかというと、造成された地盤を掘り込むことで地中に居住空間を生みだしながら地面とつながっていく建築をつくりあげています。その1m程度の地中のくぼみに表れる基礎の側面が空間の壁の一部となっています。むかしの竪穴式住居のような考え方、それに近いですかね。その地面を掘り込んだ円形状のフロアが、様々なタイプのフロアレベルにあって、コンクリート基礎のシリンダーコアによって空間がつながっていきます。そして、地表から少しだけ浮いている建築のハコ部分。そこを支える複数の枝のような柱によって、建築の上部は多様なワンルーム空間となってつながっています。

この円形になっている感じが楽しいですね。まるで遊園地のコーヒーカップにのっているような空間が幾重にも連なって広がっているようです。この円形からなる空間が、うまい具合にいい感じの距離感を作り出しています。この距離感の曖昧さによって閉塞感を感じない空間がつくりだされています。私も可能なら、住宅空間でみながあつまるところは円形にしたいなあ。ダイニングとか。

建築と敷地を分断することなく、外部の延長としての内部をつくりあげています。これこそ単に壁に切り取られた窓だけでつながっている環境とのつながりではない関係性ですよね。それはそのまま360度、視覚的に受け入れながら住まう構成となっています。外部環境が内部の住宅空間でおちついて座ってみたときにそれは広がっていくんですよ。はてさて、ここは外部なのか内部なのか。この表現によって内外部空間の連続性を生み出すことができました。環境がひとつながりになっている。ひとつの風景となりえるような建築となっています。

小さな円形をつくりだすコンクリート型枠、またしつらえ部分も、造作家具などの仕上げ材として使用している構造用R合板、なかなか住宅の規模でこれらを施工するにあたってはたいへんであったでしょうね。それでもこれだけの施工精度高い空間をつくりあげているのは、小さなディテール検討の積み重ねや職人技術、そして生産する業者との対話が相当なされたことが想像されます。

いやいやそれにしても、それ以前にこういう関係性の住宅で暮らすライフスタイルも気になります。原始的な住むという行為に回帰しているのかな?その環境を許容できるクライアントの理解がこの空間を生き物へとつくりあげているのでしょうね!

建築:Pit house

設計:UID

建築をみた雑誌:GAHOUSE124

建築のある場所:岡山県

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